>>1の続き

 セスが兄とは『別の道』を通って、苦労してたどり着いた大舞台だったからこそ、このシリーズは特別だった。なかでも、第2戦は思い出に残る試合となった。

 兄とマッチアップしたセスは、前半だけで兄から2回スティ―ルを記録し、ブレイザーズの15点リードでハーフタイムを迎えた。後半になると、ウォリアーズが怒涛の追い上げを見せる。ブレイザーズも粘って再び突き離し、それをウォリアーズがさらに追いかける。

 第4クォーターの残り2分1秒、ウォリアーズが1点ビハインドの場面で、ステフが3本のフリースローを得た。1本目を沈めて同点にしたステフに、セスは「これで70本連続ぐらいだった?」と声をかけた。そう言うことで、連続フリースロー成功を途切れさせようとする、弟の作戦だった。

 しかし、兄は少しも慌てることなく、冷静に「そうか。それじゃ72本連続になるな」と言い、その宣言どおりに残りの2本も決め、2点リードを奪った。

 だが、セスも負けていない。残り1分3秒にスリーポイントシュートを決めて、ブレイザーズが再逆転する。「カリー対カリー」の見せ場だった。

 結局、その後、2本連続でシュートを決めたウォリアーズが勝利。ステフは37得点・8アシスト・8リバウンドをあげる活躍を見せ、セスも16得点・2アシスト・4スティールでチームに大きく貢献。4スティールのうち3本は兄から奪っている。

「少しでも流れを変えようとした。彼(ステフ)に得点を取られ、活躍されるのはわかっていたけれど、自分の仕事をし、少しでも自分の存在を感じさせ、邪魔をしたかった」とセスは語った。

 一方ステフは、兄らしく、自分の勝利を喜ぶ一方で、弟の活躍を誇らしげに称賛した。

「セスは嫌らしいディフェンスをしてきたし、第4クォーターに重要なシュートを3本決めてきた。ウチの両親にとってはヤキモキする試合だったかもしれないけれど、今夜は完璧な結果となった。彼が活躍して、僕が勝ったのだからね」

 その4日後、シリーズはウォリアーズの4連勝で終わった。オーバータイム(延長)の激戦だった第4戦が終わった後、ふたりはコート上でお互いの健闘を称えてハグし、ユニフォームを交換した。

「これ(兄のユニフォーム)は額に入れるか何か、このシリーズ、今の時間を記念にとどめられるような特別な方法で取っておくつもりだ」とセス。「この先、プレーオフの舞台で再び対戦することがあるかどうかもわからない。僕らふたりにとって、特別な時間だった。この先、ずっと忘れないだろう」

 5年連続NBAファイナル進出を決めたステフは、レポーターから弟との対戦となったシリーズについて聞かれ、こう答えた。

「どちらかが負けなくてはいけなかった。でも、これは弟自身にとっても、彼のキャリアにとっても、大舞台での戦いのスタート地点にすぎない。単にここにいるべき選手だというだけでなく、プレーオフで多くの時間に出場する選手ということを、多くの人たちに証明した。そして、僕らはふたりとも、残りの人生でこの経験を決して忘れない。それが、何より大事なことだ」