「クレイジーケンバンド」が、北方謙三氏(71)の小説「抱影」を映画化した「影に抱かれて眠れ」(監督和泉聖治、今秋公開予定)の主題歌を手掛けた。

 ボーカルの横山剣(58)が、1980年代の終わりに映画の舞台となる横浜・野毛周辺をイメージして作った未発表曲「場末の天使」を提供。思い入れの強い楽曲を平成の30年で熟成させ、令和にお披露目することになり「結果的に、映画に呼ばれて出来上がった。イイネ!イイネ!イイネ!」と喜びをかみしめた。

 映画は、加藤雅也(56)演じる野毛で酒場を営む画家が、横浜の裏社会の闇に巻き込まれていくハードボイルド。横浜で生まれ育った横山は、プロデューサーで俳優の中野英雄(54)からのラブコールに、当初は書き下ろしを考えていたという。

 しかし、脚本を読み撮影現場を訪問して「ネオンの背景にある悲しみ、タブーな感じと優しい包容力があって、絶対にこの曲がいいと直感した」のが「場末の天使」だ。20代で曲と歌詞を書いたが、「酒を飲まない俺が、こんな歌を歌っていいのか。もう少しシブくなってからやろう」とストックし、ずっと心の中にとどめていた。

 一時は人に提供しようと考えていたこともあったが、原石状態のデモ音源を渡したところ、和泉監督ら製作陣が“ひと聴きぼれ”。ギター、キーボードの新宮虎児(56)の協力を得て歌詞をさらに練り上げ、アレンジを固めてレコーディングした。

 哀愁漂う歌声が映画の冒頭とエンディングを飾ることになり、横山も「サグラダファミリアのような感じの経年だね。でも、古いけれど新曲。最高の形で“完成”した」と満足げ。今夏にリリースする新アルバムにも収録予定で「バンドにとっても大事な曲になると思う」と期待した。 

 《抗争巻き込まれ》原作の「抱影」は、講談社創業100周年記念で出版された小説。酒場を経営しながら平凡な日常を送っていた硲(はざま)だったが、NPO法人で働く弟分が殺されたことから、地元で対立するやくざ組織の抗争に巻き込まれていく。同時に純愛を貫いていた人妻の余命を知り、ある決意をする。共演は中村ゆり(37)、松本利夫(43)、余貴美子(62)、火野正平(69)ら。


2019年05月08日 05:30
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