2019年3月30日 15時29分 HARBOR BUSINESS Online
http://news.livedoor.com/article/detail/16241220/
http://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/e/3/e3e70_1434_8406d3e0_58ed89cb.jpg
イメージ

 3月18日、TOHOシネマズが映画料金を1800円から1900円に上げると発表した。これに不満の声をあげる映画ファンは多く、問題となっている。その背景にはどんな理由があるのか、迫ってみたい。

◆日本の映画料金は世界でもトップクラスの高さ

 まず、映画ファンの間には、「ただでさえ日本の映画料金は高いのに」という声がある。では、どのくらい高いのか?

 世界各国の映画料金の比較を行った海外サイト「Nation Master」の資料を見ると、’14年の調査時点で日本の映画料金は17.67ドル、調査対象174か国中5番目の高さだ。

 1位のサウジ・アラビアの60ドルというのは驚異的な高さだが、日本の映画料金の値上げが26年振りであることを考えると、以前であれば2位アンゴラ、3位スイス、4位ノルウェーよりも高かった可能性さえある。今回の100円値上げというだけでもノルウェーを抜く可能性は大だ。

 その他、代表的な国との比較で言えば、イギリスが13.30ドル、フランスやドイツが12.29ドル、中国が12.23ドル、イタリアやスペインが10.92ドル、アメリカが10ドル、台湾が8.91ドル、韓国が8.41ドル(いずれも’14年時点の統計)となっている。

 ちなみに筆者の住んでいるブラジルは、ほかの南米圏の国同様に入場料は安く、7.65レアルとなっている。この5年で物価がだいぶ上がった気もするので今となってはもう少し高い気がするが、それでも生活実感として10ドルを超えているということはない。

 しかもブラジルの場合、日本でも導入されているシニア料金は通常料金の半額(日本の場合は700円割引だが半額には至らず)であるほか、映画館のスポンサー銀行による半額割引が効くところも多く、それがゆえに日本円換算で600円もかからないで映画を見ることができている。

◆ブラジルなら「VIP席」で1600円程度

 そんなブラジルでも高い映画館というのは存在する。それは「VIP席」と呼ばれるもので、そういうタイプの映画館に行くと、座席が大きなリクライニング・シートになっている。グルメやポップコーンをはじめ、通常の映画館ではまず食べられそうにない小洒落た料理までウェイトレスが運んでくるサービスのものもあるが、それでも料金は日本円で1600円程度だ。もしブラジル人が日本の映画館に行ったら、信じられない思いをすることになるだろう。

◆配給と映画館の経営母体が同一会社

「ある映画館の料金が上がっただけなら、ほかの系列の映画館に行けばいいのでは?」と思われる方もいるだろう。だが、TOHOシネマズの値上げはほかの映画館にも大きな影響力を及ぼすものだ。それはなぜか? 日本の映画館は配給会社が直接的に経営、あるいは提携しているケースがほとんどだからだ。

 ’00年代以来活発化したシネマ・コンプレックスの発展の影響で、現在、日本における映画館数は大手4社がそのほとんどを占めている。東宝系列のTOHOシネマズ、ワーナーが参加しているイオン・シネマ、松竹が経営する松竹マルチプレックス・シアターズ、東映が運営するティ・ジョイの4つがメインとなっているのだ。

 大昔は、配給会社専門の映画館というものも存在したが、スクリーン数の多いシネコンが生まれてからは「一社提供」というわけにもいかず、映画館としてはさまざまな配給会社の作品がないと運営していけないのが現実だ。

◆「TOHOシネマズ」価格が業界標準になりやすいワケ

 そこで、ある映画館Aが、ほかの配給会社Bの運営する映画館よりも極度に低い料金設定をしたら、いったいどういう事態が考えられるか? 「Bで配給している作品は、Aでは上映させない」。そういう反応が起こっても何ら不思議はない。

 現在、邦画のヒットの大半を占めているのは東宝の作品だ。ほかの劇場の料金がTOHOシネマズとさほど変わらないのには、そういう理由もあるかもしれない。

http://news.livedoor.com/article/detail/16241220/
http://news.livedoor.com/article/detail/16241220/?p=2