20年近い記者生活の中でも類を見ないほど、説得力のない会見だった。22日に新潟市内で行われた、NGT48の運営会社・AKSによる記者会見。昨年12月、メンバーの山口真帆(23)が男性2人から暴行される被害を訴えていた件に関し、2月1日に発足していた第三者委員会の報告を発表するものだった。

 報告書自体は前日の21日に突然、公表された。その内容を読むにつけ、会見の内容も微妙なものになることは想定していた。もちろん、会見中に山口自身がツイッターで反論したという想定外の展開も影響したのは確かだが、会見に出席した立場として、予想をさらに上回る不出来な結果に終わったのには、それ以外にも3つの理由があったと感じている。

 まず第一に、会見を行った取締役の松村匠氏を含め、AKS側が「第三者委員会」の意義を十全に理解していなかったことだ。第三者委員会には調査の強制力もなく、実際に報告書にも、その真実性を強く担保するものではないと記されている。それでもAKS側は、ファンと私的なつながりを持ったメンバーを不問に付すなど、グループに対する処置を決める基準として、「第三者委員会の先生方の判断」を錦の御旗のように利用した。

 報告書の中でも、被疑者男性が暴行をそそのかしたとして一部メンバーの名を挙げたことは認定しているが、そこは「証拠がない」として無視した。一方で、委員会が騒動の原因の一つとして新潟の地域性を指摘した点については、はっきりと「そうは考えておりません」と否定。同じ報告書の中で、一部を否定し、一部を無条件に受け入れるというのは、説得力の欠如に直結する。さらに言えば、委員会のメンバーが1人も出席せず、依頼した側だけで会見を行っている時点で、その信頼性は決して高いものにはならない。

 第二には、山口に対する「被害者」という視点が欠落していたこと。山口の主張が完全に正しい保証はなく、運営側の主張が誤っている保証もないが、実際に山口は男性に暴行されたという事実は存在する。心身ともにダメージを受けた山口のケアに関しては、具体的に行われた様子はまったくない。

 その上で、会見でも質問したが、被害を受けた山口の主張を採用せず、メンバーの主張のみを採用し、関与がなかったと「断言」した理由は何だったのか。「被害者がかわいそう」という感情的な問題ではなく、実際に暴行が起こったことの十分な説明が、この回答ではつかない。

 第三に、これが最も大きいと思われるが、運営側に何かを隠そうとする意図が明確に見えていたことだ。松村氏は、メンバーとファンの私的交流を説明するたびに「あいさつ程度でも」という言葉を連発。実際に「あいさつ程度」という文言は報告書には記載されていなかったのだが、問題はそれよりも、より小さな事象を強調して意識させることで、より大きな事象から目を背けさせる狙いを見せていたことにある。

 父母への説明に関しても、一部記者が山口の父母の反応を質問したところ、松村氏は「山口だけでなく、ほかの父兄も出席していて」と回答し、全体的な話題にすり替えた。言うまでもなく、こちらが聞きたかったのは全体の意見の要約ではなく、山口の父母の回答それ自体。そこから逃げてないふりをして逃げたとしか、こちらには感じられなかった。正直なところ、回答の内容に誠実さが感じられなかったことで、取材陣のイライラが募って追及が厳しくなった点も否めない。

 とにかく、質問と回答の食い違いが相次いだ会見。それでもAKS側は、再調査については明確に否定した。ファンやマスコミの反応を見ても、今回の会見が失敗であり、山口と運営の溝はさらに深まっているのは間違いない。少なくとも、松村氏が連呼した「話し合い」で解決する期間は過ぎた。このまま反対側を向き続けていれば、問題は解決するどころか、グループの存続事態にも関わる展開になるのは必至だろう。(デイリースポーツ・福島大輔)


3/26(火) 16:49配信 デイリースポーツ
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