私は今、Jリーグのアドバイザーをしています。理事の方に「好き勝手な意見を言って欲しい」ということで誘われて、2015年からですね。それ以前にも、Jリーグについては「こういうところが惜しい、もったいない」と思ってて、個人的にツイッターやメルマガなどで発言、発信していたので、それがきっかけなんでしょう。

 その頃から言ってますが、Jリーグには英プレミアリーグの位置を奪うポテンシャルがあると思っています。理由は何よりも、これから発展していくアジア圏で一番のリーグだから。始まってから25年と歴史の蓄積があり、加盟クラブも正会員(J3まで)だけで54と多い。治安がよくて食べ物が美味しく、観光地があちこちにある日本というのも、外国人のファンを作る上では大きなアドバンテージです。

 これから人口が増えていくアジアは、地政学的に発展するのは間違いないんですよ。今、世界的に一番人気があるのはUEFAチャンピオンズリーグだけど、近い将来にアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)になると考えるのは自然なことです。

■課題はスタジアムにあり

もちろん課題はたくさんありますよ。サッカーファンじゃない普通の人、行くとしても年に1、2回という人たちに、サッカースタジアムに行く習慣を持ってもらわないとダメでしょう。今だと、スタジアムに入ることが結構なハードルになっていますよ。熱狂的なサポーターたちの排他的な雰囲気はもちろん問題ですけど、それ以前にチケットが買いにくかったりする。私は「見えない結界」って言ってますけど、そういうのがあるんですよ。

都心にスタジアムが無くちゃダメですよね。秩父宮(ラグビー場)だって、サッカースタジアムにした方がいいと思いますよ

 スタジアムを自治体主体で作ると、都市公園法やらなんやらで、物販に制約がかかったりするらしいんですよ。ガンバ大阪のホーム(市立吹田サッカースタジアム。2016年開場)はいいやり方ですよね。民間からの募金や助成金で建てて吹田市に寄贈し、ガンバが運営管理するという。スタジアムの建て方だっていろいろあり得るわけですよ。

 それと、富裕層、スーパーハイエンドへの接遇をまともにしないとはじまらないと思いますね。プレミアリーグでは、どんなど田舎のチームでもそこは大事にしているんですよ。ちゃんと豪華なホスピタリティルームが必ず用意されている。スポンサーや地方の名士が集まるような場所になっているわけです。日本でそうなっているところはありませんね。

 ライブビジネスは、富裕層、VIPから8割のお金を取る形にしないといけないんですよ。一般の人が入るスタンド席は賑やかしぐらいに考えるべきです。VIPシートやホスピタリティルームは徹底して豪華にし、試合後にはスター選手、ヴィッセル神戸なら(アンドレス・)イニエスタが挨拶に来るとかね。そういうことで満足すれば、人は喜んでお金を払うわけですよ。日本では待遇に差を付けるとなんだかんだ批判する人が出て来るけど、その考えは悪平等がすぎると思いますね。

 イニエスタもそうですが、有力外国人選手がリーグに加わることは、集客やプレーのレベルを上げるために重要です。外国籍選手がベンチ入りできるのは3人だけなんていう規制は意味ないし、やめた方がいいですよ。世界に見てもらうということを考えるとね。

 今、中国のスーパーリーグがヨーロッパで活躍していたスター選手をどんどん招聘しています。ACLでも、中国チームの勢いは確実に増しています。でも選手たちは、治安や暮らしやすさを考えたら中国より日本に来たいはずなんですよ。金銭面以外の条件は確実に勝っているんだから。

 そのためにも、サッカーに投資したら儲かるというイメージ作りをしないといけないですよね。地方に根付いた運営というのは素晴らしいけれど、投資対象として魅力的に見えないと、お金が集まらない。これからは、アジア企業のスポンサーの奪い合いになっていきます。Jリーグが投資に値すると感じさせることはそういう点でも重要です。

 2017年にはダゾーンが10年間で2100億円という契約で、Jリーグの独占放映権を獲得しました。それは朗報だけど、私自身は5000億円取ってもよかったと思ってますよ。これからスマホシフトも進みます。視聴環境が変わってくるわけです。VRを使って見るということも浸透してくるでしょう。いろいろな見せ方、提供の方法を工夫できるわけです。伸びしろはそういう点でも多いですね。

週刊文春 全文
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