踏み出した左足の着地とリリースポイントのタイミングが合えば素晴らしい直球が捕手のミットをたたく。だが、それも5球に1〜2球で、あとは右打者の頭部付近にスッポ抜けるか、左打者の足下にひっかけるか…。ブルペンを視察した阪神OBからはさまざまな声が聞こえてきた。

 「ステップの幅が広すぎる。もっと踏み出す左足の着地点を狭めないとリリースポイントは一定しない」

 「テークバックが大きすぎる。今年から甲子園のマウンドも硬くなって踏み出す足は粘れない。もっと後ろを小さくしないといけない」

 「使っているグラブが小さすぎる。今年からワインドアップに戻した。あんな小さなグラブでは右手首の角度が丸見えで球種がバレバレだわ」

 まさに忠言や助言の百花繚乱(りょうらん)…。

 2012年秋のドラフト会議で4球団競合の末、当時の和田豊監督が交渉権確定のクジを引いた。ルーキーイヤーから10勝、11勝、14勝。期待通りの活躍からここ3年は通算15勝19敗。右打者の頭部付近に投球がスッポ抜ける悪癖が治らず、周囲からは「イップスになった」とまで…。果たして3月29日開幕のシーズンまでに復活の糸口は見つかるのか。

 あれは6年前だ。ヤクルト、西武を率いて通算3度、日本一に輝いた名将・広岡達朗氏は藤浪について指摘していた。

 「こういう大きな体の子は基礎から徹底的にやらないとダメ。一度、崩れ始めたら大変なことになる」。まさに慧眼。ただ、何が何でも復活してくれないと阪神の14年ぶりのリーグ制覇も夢の彼方…だ。(特別記者 植村徹也)
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