夏の甲子園大会出場9回、2009年には準優勝した名門野球部で、窃盗事件のもみ消し疑惑が浮上した。

 新潟県の日本文理高等学校野球部員の金銭紛失が頻繁に起こるようになったのは17年10月ごろから。昨年12月まで複数の部員が被害に遭い部室や野球部寮から総額20万〜30万円が消えたという。

■部員の保護者を集め

 学校や野球部の監督が事件を把握したのは昨年6月。部員のひとりが学校へ被害を報告したことがきっかけだった。直後に鈴木崇監督が部員を集め被害状況を確認したところ複数の者が金銭がなくなったことを認めた。「問題はその後です」と、事情を知る関係者が言う。

「6月9日に被害者の親が集められ、野球部長、監督から事件の詳細について説明があるかと思ったら、『お金がなくなった時、なぜすぐ報告しなかったのか』と逆に親を責めるような言動があったそうです。そればかりか、『(警察に)被害届を出せば(夏の県予選は)出場停止になるかもしれないですが、どうしますか?』と言われたといいます。夏の県予選の開幕まで1カ月を切ったタイミングで部内の窃盗事件が公になれば、大会参加の是非が問われかねない。そう言われたら保護者が被害届を出せないことがわかっていたからでしょう」

 被害者の親が呼ばれた翌日(10日)には、父母会の会長から「犯人探しはするな」という内容のメールも送られている。

 それ以後も部員の金銭紛失は12月まで続いた。11月には3年生部員5人による飲酒、喫煙事件が発覚。この事件は寮生が学校に通報し、すぐに学校が調査して新潟県の高野連に報告している。

「即座に対応したのは処罰の対象が部活動を引退した3年生だったからでしょう。実際、高野連も野球部に対しては文書で厳重注意を行っただけ。部長は退任しましたが、寮を管理する立場の鈴木監督はけん責処分で辞めずに済んでいます」(前出の関係者)

■「厳しく処分してほしい」

 飲酒や窃盗事件が相次いだ野球部は、寮で生活する部員が昨年末に帰省する際、アンケート用紙を配布。部員には、以下の項目などを聞いた。

・これまで寮内で飲酒したことがあるか
・喫煙はあるか
・飲酒した選手を見たり、聞いたりしたことがあるか
・今まで金品の紛失をしたことがあるか

 そして保護者には、別紙で以下のように質問した。

@生徒から不祥事(飲酒、喫煙、金品紛失、いじめ、体罰など)に関する話を聞いたことがあるか
Aあれば具体的に

「新年は6日から練習開始で、部員たちはアンケートをコーチに提出。しばらくして、アンケート結果がプリントで返ってきた。生徒9人は金品紛失があると答え、@の質問にあると答えた保護者は67人中19人もいた。さらに『平成30年6月頃金品の紛失について学校から連絡があった』という答えの他に、『勝手に人のモノを持っていったり、紛失したり等の話は聞いている、厳しく処分してほしい』という親御さんの切実な願いも記されていた。大事な問題ですから、当初はアンケートの報告会が行われる予定でした。でも、野球部父母会の役員と学校側が協議して書面を郵送するだけになった。これも解せません。学校側は金銭紛失にはかなり神経質になっているようで、今月4日には父母会の会長から部員の親に『マスコミの取材には個人で対応せず、必ず学校か私に連絡するように』とメールがあった。ウヤムヤにされたままの部員たちは学校側の対応に不信感を抱き、部員同士の信頼関係も崩れてしまった」(前出の関係者)

 この件を重く見たある関係者は匿名で子供の人権を守る「NPO法人子どものオンブズにいがた」に相談。代表者が日本文理高の上野順治校長宛てに「貴校野球部における盗難事件に関する申し入れ」を送り、NPO法人は話し合いを求めたが、学校側からは「この件に関しては話す必要はない」と返答されたという。

■学校に問い合わせると

 日刊ゲンダイは18日午前、学校に電話で上野校長宛ての取材を申し込んだところ、野球部部長の田中利夫副校長が対応。

「野球部内で繰り返し起きた金銭紛失の件と、NPO法人の代表者となぜ会わなかったのか」と聞くと、田中副校長は「コメントする立場にない」と答えた。

「学校側は寮の出入り口にカメラを設置した。各部屋のドアに暗証番号による施錠をし、個人用の保管ボックスも置いた。寮の巡回生活指導なども強化して、部員の窃盗事件に幕を下ろそうとしていますが、子供も親も心の霧は晴れません」と前出の関係者は肩を落とした。

 このまま真相は闇の中か……。

2/20(水) 9:26配信 日刊ゲンダイ
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