■あの人いま 元中日ドラゴンズ 根尾晟さん(28歳)

2029年、日本シリーズ。 それを、TVで見つめる男がいた。
18歳で将来を嘱望されドラゴンズに入団した、根尾さんは今……

「あの頃は若かったですね(笑)」若き日を回想する根尾は、どこか寂しげだ。
「未だに当時の夢を見ることがあるんですよ。日本シーズで、俺がサヨナラホームランを打つ夢を」

大阪桐蔭高校を卒業後、ドラフト一位で中日ドラゴンズに指名され華々しくプロ入りを果たした。
岐阜県飛騨市出身という縁もあり、地元出身の看板スターを求める球団やファン、マスコミから大きな注目を浴びた。
しかし、入団一年目から故障がちになり、同じポジションの先輩・京田の壁を超えることが出来ず二軍暮らしが続いた。
そして24歳の時、突然球団から戦力外通知を受けた。
球団からフロント入りを打診されたものの断り、トライアウトを受け、独立リーグ・石川ミリオンスターズに入団が決まった。
しかし、ここでも故障にたたられ、若手選手の台頭に押され目立った活躍はできず25歳の若さで引退を決意。
今はレンタルビデオ店を営む傍ら、地元の少年チームのコーチを勤めている。

●看板の屋号の文字は元中日監督・与田剛氏の手によるものだ
「いらっしゃい」。JR高山本線飛騨金山駅から歩いて30分。
「DVDレンタル NEO」のえび茶色の看板を目印に店内に入ると、白いタオルを頭に巻いた根尾さんの元気な声に迎えられた。
「去年の4月にオープンしました。看板の『NEO』という文字は与田さんに左手で 書いていただいたものだし、開店に合わせてスポーツ紙やテレビでも取り上げてもらった
おかげで、県外から足を運んでくださるお客さんが多かったのはうれしかったですね」

●とはいえ、その分、プレッシャーも大きかったという。
「映画好きはわざわざレンタルなんてせずに。ネットで鑑賞する時代でしょ。
ボクの店はDVDしか置いていないのが特徴だから、ブルーレイで見たい人たちにはモノ足りないようなんです。
それで怒られちゃったこともあるけど、それも修業のうち。我慢、我慢です」

●かつての同僚で現巨人で四番を打つ藤原恭大や、ホームラン王を獲得した西武の山田健太ついて尋ねると……
「あいつら俺より下手だったんですけどね(笑) 」と、おどけ
「体格に恵まれるのも才能だと思いました」
「怪我さえ無ければって…歯がゆいですけど。」
「今はもう現役に未練はありません。今度は、教え子で日本一を狙いますよ(笑)」

(写真) DVDを手に持つ根尾さん