80年代半ば、バブルの頃にはすでに時代の陰、最後端だった尾崎。
10代のころ、最初、歌詞の意味が取れなかった。つぎになんとか理解しても、好きになれない、共鳴できなかった。
不良という見知らぬ世界が虚しく、作り事の蜃気楼にも思えた。
そりゃあそうだ。尾崎はどちらかといえば都市の金持ちの優等生。それがあえて田舎臭い、劣等生ごっこ、中身のない様式美の不良ファンタジーを、半分、学園紛争にノスタルジー持つ上の世代へのリップサービスみたいに歌っていた。
カウンターカルチャー業界なら、学校や家庭への反抗、逃走がいい媚になる。

当時、尾崎を知って不良から足を洗うきっかけになった、背中を押してもらったって話は時々あった。世代的に自分より3-4歳ほど歳上で、田舎や郊外に住む人たちに多かった。
そりゃそうだ。尾崎を聴いて、初めて不良をするとか、もっと本格的に不良をやってやるというのではない。その反対。
尾崎を聴き込むほど、不良なんてしょせん非現実的、うわべだけのロマンと気づく。
尾崎の音に馴染むと、自分も尾崎みたいに不良みたいだけれど実は繊細で、根は真面目で礼儀もあって、
ちょっぴりインテリっぽい歌詞も書ける優等生になれる気もする。

カウンターカルチャーの逆説を地で行くキャラだった。