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■旧態依然の映画業界をぶっ壊す

 先にも触れたように、現在、Netflixはオリジナル映画の「ROMA/ローマ」がアカデミー賞作品賞にノミネートされるなど、賞レースにも絡むようになり、映画業界全体の牽引役を担っていることはもはや論を俟たないだろう。

「今年初め、ハリウッドのメジャー映画会社で組織された業界団体『アメリカ映画協会』に、Netflixがネット配信業者として初めて加入することが決定しました。このことから、Netflixは大手映画会社と肩を並べたことがわかり、一配信業者と呼ぶにはふさわしくないほど、大きな存在となっています」

 このように、劇場公開をしないビジネスモデルで成功を収めているNetflixだが、一方でその方針に異議を唱える声もある。

 たとえば、カンヌ国際映画祭は、「フランスで劇場公開しない作品は、コンペティション部門への参加が認められない」と、明らかなNetflixの締め出しを宣言した。あるいはスティーブン・スピルバーグ監督も、過去Netflix作品がアカデミー賞にノミネートされた際に「オスカー候補にふさわしくない」と語っている。

 侃々諤々の議論を起こしているNetflixだが、今後の映画業界にとっていかなる影響を及ぼすのだろうか……。

「映画の楽しみの一つには、たしかに劇場の大画面で観る臨場感があるのは無視できません。しかし映画の面白さの本質は、あくまで作り手の“創造力”にあると思います。Netflix作品のなかには、それを満たしている作品がいくつもある。そういう作品と、劇場で上映される作品との間に、本質的な違いが存在するとするなら、それは観客側というよりも、既存の映画業界側の事情なのかもしれません。そして、“映画は劇場で観るもの”という先入観に、Netflixは大きな一石を投じたのです」

 さらに、近年のハリウッドでは、商業主義に走る映画会社が「クリエイティブ上の違い」などの理由から監督を交代に追い込む事案が相次いでいる。12月に公開予定の「スター・ウォーズ エピソード9」や、大ヒット上映中の「ボヘミアン・ラプソディ」などの作品でも監督の途中交代があったばかりだ。

 記録より記憶に残る映画を撮る――。作家性が軽んじられている時流に、Netflixにクリエーターが集結するのはある意味必然なのかもしれない。

取材・文/沼澤典史(清談社)

週刊新潮WEB取材班
2019年2月15日 掲載