現在放送中の連続テレビドラマ『3年A組―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)で主演を務める菅田将暉の鬼気迫る演技がすさまじい。

物語は、ある高校の美術教師である菅田将暉が、卒業式の10日前に担任クラスの生徒29名を人質に取る――という衝撃の幕開けから始まる。
主人公の目的はただひとつ、数カ月前に自殺したアイドル的存在の女生徒の「自殺した真相」を暴くこと。
校舎内の至る所に爆弾を仕掛け、刃向う生徒をボコボコにし、真犯人をあぶり出すため次々と生徒を虐殺していく――。

これだけ聞くと、未見の人は「あの菅田将暉がサイコパス役?」と思ってしまいそうだが、回を重ねるにつれ、「実はこの美術教師は生徒を殺してなかった」ことが判明していく。
この予想外の急展開に、「生徒が死んだふりするってどういうこと?」「体罰教師が主人公で面白かったのに、大丈夫かこのドラマ?」と、物語の行く末を疑問視する声がネット上で続出。
これに対し、あるテレビ局のドラマ関係者は次のように語る。

「いやいや、実は最初の生徒を殺したときからして、かなり不自然でしたし、その生徒の手を切り落としてほかの生徒に見せたときにも、わかりやすいくらい思いっきり“フェイクの手首”でした。
むしろ演出側が、『実は生徒を殺してません』と気づかせようとしているのは明白でした。
日曜の22時30分からの放送ですし、たくさんの青少年が観る枠ですから、さすがに完全サイコな主人公は難しい。
菅田さんはオールナイトニッポンのパーソナリティも毎週担当していますし、今や若者の“兄貴”的存在。むしろ、第4話まで虐殺教師という設定をよく引っ張ったとさえ思います」

●“フェイク感”全開の虐殺手首

 同作は原作モノではなく、『電車男』(2005年、フジテレビ系)、『花ざかりの君たちへ?イケメン♂パラダイス?』(2007年、同)などをはじめとして確かな実績を誇る脚本家・武藤将吾によるオリジナル脚本。
今をときめく人気俳優・菅田将暉に加え、NHKの朝ドラ『半分、青い。』終了後初の連ドラ出演となった永野芽郁も生徒役で出演しているため、
さすがに本当の「虐殺ドラマ」としては成立させづらかったのだろう。

しかし、「二大人気キャストへの配慮や放送枠の兼ね合いで、ストーリーとしては物足りなくなっている」という意見もあるという。

「物語としては、『本当に生徒を虐殺した』と思わせたほうが絶対によかったはず。そのほうがドラマの後半が俄然盛り上がりますし、海外ドラマなら絶対にそういう演出をしたはずです。
しかし、人気俳優と人気朝ドラ女優の主演ドラマとあっては、これが限界。
ちょっとしたことでコンプライアンスが叫ばれるこの時代に、攻めた内容にしすぎると、スポンサーすらつかないのが現状です。

そういった目線であの手首を改めて見てみれば、むしろ“フェイク感”を前面に出しすぎたくらいの手首だと気づくはず。
実際SNSなどを見てみても、『本当に生徒が虐殺されている』とミスリードした視聴者は少数派だと思います。
個人的にも、あの手首にダマされたのだとすれば、『もうちょっと真剣にドラマを見てくれよ……』と声を大にして言いたくなりますね」(前出のドラマ関係者)

●映画作品であったなら『バトル・ロワイヤル』を超えたか

似たような設定で思い出されるのは、興行収入30億円を突破した大ヒット映画『バトル・ロワイヤル』(2000年公開、監督/深作欣二)であろうが、
同作のような内容を期待してこの『3年A組―今から皆さんは、人質です―』を見続けていた視聴者は、やや肩透かしを食らった感もあるだろう。
しかし、「菅田将暉だからこそ、『本当に生徒を殺したんじゃないか?』といったミスリードを誘発できたもいえる」と語るのは、あるテレビ局のディレクターだ。

「映画作品ではサイコパス役や汚れ役も厭わない菅田将暉だけに、このドラマで見せた“殺意”は、本物と錯覚するほどでした。
それは、菅田将暉という天性の俳優だからなし得たこと。2019年のいま、この物語を連ドラでやるのであれば、最高のキャスティングだったと思います。
逆にいえば、もしもこの連ドラが映画であったとすれば、もっと観客をしっかりとミスリードさせるようリアルな手首を使ったはず。
実際、生徒を人質に取って以降の10日間を全10話で見せるという構成も、少々間延びしていますしね……

http://dailynewsonline.jp/article/1688499/
2019.02.11 22:20 ビジネスジャーナル