米プロバスケットボールNBA、グリズリーズとツーウエー契約を結び、日本選手で2人目のNBA選手になった渡辺雄太が徐々に力を発揮し始めている。

2018年10月27日のサンズ戦でデビュー。その後はなかなかプレーする時間に恵まれなかったが、NBA選手として初めて両親の前でプレーした19年2月5日のティンバーウルブズ戦で5得点、4リバウンド。これで勢いをつけると、7日のサンダー戦では日本選手として初の2桁となる10得点、5リバウンドをマークした。

この2試合はチーム内にけが人が多く、トレード成立直後の一時的な戦力不足もあり、プレー時間が増えたのは事実。それでも限られた出場機会を生かし、目を引く数字を残した意味は大きい。「得点はもっと取れていたはず。ただ(自分の持ち味は)得点だけではないので」という本人の言葉からも、このレベルでも攻守の様々な面で貢献できるという自信が感じられた。

04年にサンズでプレーした田臥勇太(現栃木)が残した記録の多くをすでに超え、「日本選手最高」というくくりで語られる段階はもう過ぎた。堅実なディフェンスに加え、リバウンドをものにして速攻でフィニッシュまで持ち込む渡辺の武器はNBAでも通用する。そうした状況で今後の目標は、チームのローテーションに定着し、NBAでも真の戦力としての立場を確立していくことだ。

■立ちはだかるツーウエー契約の壁

状況は依然、容易ではない。ようやく力を発揮し始めたところで、今度はツーウエー契約の壁が立ちはだかる。下部Gリーグのハッスルに所属しながらNBAに一定期間登録が可能な渡辺がグリズリーズに帯同できるのは1シーズンに45日間だけ。グリズリーズのバスケットボール部門副社長ジョン・ホリンジャー氏によると、残り日数はあと7日と少なくなっており、今後は「チーム状況と照らし合わせながら起用を考えていく」という。

グリズリーズは今季残り25戦。Gリーグのシーズンが終わり、ツーウエー契約選手の出場制限がなくなる3月22日までに15試合もある。今後新たに契約を結び直さない限り、3月下旬までは出場機会が限られることになる。

しかしそうした難しい立場も、渡辺にとってはもう望むところなのかもしれない。振り返れば、カレッジ時代もNBAでのプレーが常に有力視された選手ではなかった。昨年6月のNBAドラフトでも指名を受けず、NBAの若手選手が集う7月のサマーリーグで実力を誇示しなければならなかった。たび重なる試練の中でも辛抱強く努力を続け、確実に力をつけ、ついにNBAに到達してみせた。そうしたここまでの道のりと同じように、渡辺は今後も地道に前に進み続けるに違いない。

「(ツーウエー契約の)残りの日数は気にしていなかった。とにかく言われたことを一生懸命やるだけ。自分がいる場所はNBAなのだから、そう簡単に出場できたら誰も苦労しない。日々成長していくしかない」

9日のペリカンズ戦後の言葉通り、渡辺のNBAでのキャリアは始まったばかりである。大切なのはGリーグと限られたNBAでの出場機会で可能な限りアピールしていくこと。継続して努力できる姿勢が変わらない限り、これまでと同じくいつか必ず道は開けるはずである。


スポーツライター 杉浦大介

2019/2/11 6:30
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