連覇の道は、いばらの道か――。

昨季、悲願のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)を制した鹿島。現在地をはかるべく臨んだ2月9日のプレシーズンマッチ・J2水戸戦は、よもやの大苦戦を強いられた。王者の風格は見る影もなかった。

「水戸のアグレッシブな姿勢に面食らったところがあった」と大岩剛監督は本音を漏らした。前半は試合を優位に進め、24分にMF中村充孝の得点で先制。しかし、2分後の右CKではDF町田浩樹のヘディングがクロスバーを叩きゴールならず。追加点を奪えずに前半を終了した。

 後半は後手に回った。積極的にプレスを仕掛けてくる水戸の守備網に手を焼き、前線のFWセルジーニョにボールが収まらなくなると、攻撃を構成できなくなった。シュートは水戸の4本に対して、FW土居聖真の1本だけ。見せ場なく、試合は終了した。

「怪我人がいて、(宮崎合宿で)すり合わせができなかった選手の組み合わせがあった」(大岩監督)。昨年末にFW鈴木優磨が右ハムストリングを筋損傷。MF三竿健斗も恥骨関連鼡径部痛で離脱中だが、さらには金森健志、白崎凌兵といった選手たちも欠場。チームはシーズン開幕前に“野戦病院”と化し、望んでいた「すり合わせ」すらままならない苦しい台所事情のなかで試合に臨み、攻撃陣は1得点を取るにとどまった。指揮官も「物足りなさはある」と嘆くテストマッチとなった。

 一方の守備陣では収穫もあった。71分にDF町田浩樹が腰を痛め途中退場。高卒ルーキーのDF関川郁万が急きょ出場した。「(球際で)強く、自分の持ち味のところで勝負しろ」と監督の指示を受けてピッチに送り出された関川は、ビルドアップでのミスは見られたが、対人での強さは発揮。ルーズボールにも素早く反応して相手の攻撃をはね返し、「1対1では勝てたし、守備でうまく対応できた」と自信をつけた。
 
 現状では、昨年、欧州へと渡ったDF昌子源(トゥールーズ)、DF植田直通(セルクル・ブリュージュ)の穴を埋める“代表級”のセンターバックの獲得には至っていない。同ポジションは今季の不安材料だが、新主将のDF内田篤人は「他チームと違っていい選手はどんどん海外に出ちゃう。しかし、そうしてタイトルを取ってきたチーム。若い選手もポテンシャルは持っている」と前向きに捉える。

 大黒柱の主将MF小笠原満男が引退し、昌子、植田もチームを去った。怪我人も多く、ACLの連覇どころか、満足な戦力を整えることもできない。しかし、それでも鹿島には揺らぐことのない勝利への信念がある。幾多もの困難を乗り越えて成し得た「20冠」。逆境の時だからこそ、王者としての真価が問われる。

2/10(日) 12:53 サッカーダイジェスト
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