■あの人はいま 元サッカー日本代表 井手口陽介さん(30歳)

2026年、アメリカ・カナダ・メキシコ共催W杯。 それを、TVで見つめる男がいた。
20歳で日本代表に選出され、W杯出場を決定づけるゴールを決めた井手口さんは今……

「あの頃は若かったですね(笑)」若き日を回想する井手口は、どこか寂しげだ。
「未だに当時の夢を見ることがあるんですよ。俺が最終予選のオーストラリア戦でミドルシュートを決めた時の夢を」

福岡県福岡市出身。中学進学時にガンバ大阪にスカウトされユースチームに入団。
すぐに頭角を現し、宇佐美貴史以来の飛び級でトップチーム昇格を果たした。
その後も順調に成長を続け、ついに20歳の若さで日本代表に選出された。
日本代表ではハリルホジッチ監督から高く評価され、若くしてレギュラーのポジションを掴んだ。
順風満帆だったキャリアだが、W杯予選後に海外に移籍したことで歯車が狂う。
移籍先のイングランド1部のリーズでは労働許可が下りず、スペイン2部のクルトゥラル・レオネサにレンタル移籍した。
しかし、スペインでは言語の壁に苦しみベンチ外の生活が続き、ハリル監督の解任もあり、確実視されていたW杯出場の夢は閉ざされた。
2018年シーズンは心機一転ブンデスリーガ2部のグロイター・フェルトで再起を図るものの開幕直後に膝の靭帯を損傷する大けがを負う不運に見舞われた。
その後、怪我を繰り返し活躍することなくクラブを退団し、2年ぶりに古巣のガンバ大阪に復帰した。
古巣での再起が期待されたものの、トップフォームを取り戻せず、ストレスからチンピラとの夜遊びを繰り返すなどし、ついに解雇となった。
結局、サッカーへの情熱を失い25歳の若さで引退を決意。
今はヤンキーファッション専門店を営む傍ら、地元の少年にサッカーを教えている。

●店の屋号の文字は元日本代表監督のヴァビド・ハリホルジッチさんの手によるものだ
「いらっしゃい」。JR博多線東博多駅から歩いて25分。
「ヤンキーファッション IDEGUCHI」のえび茶色の看板を目印に店内に入ると、白い特攻服を着た井手口さんの元気な声に迎えられた。
「去年の4月に開店しました。看板の『IDEGUCHI』という文字はハリルさんに左手で 書いていただいたものだし、開店に合わせてスポーツ紙やテレビでも取り上げてもらった
おかげで、県外から足を運んでくださるお客さんが多かったのはうれしかったですね」

●とはいえ、その分、プレッシャーも大きかったという。
「最近のヤンキーは飛行機に乗ってヤンキーの本場・東京まで買い物に行く時代でしょ。
ボクの仕入れているヤンキー服は昭和のヴィンテージ物がメインだから、最新のヤンキーファッションを求めている若者にはモノ足りないようなんです。
それで怒られちゃったこともあるけど、それも修業のうち。我慢、我慢です」

●かつての日本代表の同僚でアーセナルに復帰した浅野拓磨や、アトレティコ所属でガンバユースの後輩の堂安律ついて尋ねると……
「あいつら俺より下手やったんですけどね(笑) 」と、おどけ
「やっぱり頭が悪いとダメだと思いました」
「怪我さえなければ…歯がゆいですけど。」
「今はもうサッカーに未練はありません。今度は、教え子でW杯出場を狙いますよ(笑)」

(写真) 地元の友人と写真に収まる井手口さん
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