日本が優勝した2011年のカタール大会では、準決勝の日韓戦で騒動が起きた。

 試合は2対2の同点のまま延長、PK戦へともつれこみ、日本はGK川島永嗣(ストラスブール)がスーパーセーブを連発して一つも決めさせず、辛くも勝利を収めた。

 この試合前半、韓国が先制点を挙げた際、ゴールを決めた奇誠庸(キ・ソンヨン)(ニューカッスル)が猿の顔まねパフォーマンスを披露。これが日本人を侮辱した行為ではないのかと議論になった。韓国側は「日本人に対してではない」と説明したが、後味の悪さが残った。

◆中東の笛?…判定に抗議も

 同じ大会のグループリーグ、シリア戦でも問題のシーンがあった。

 日本が1点リードしていた後半、日本のゴール前に転がったボールをGK川島がダイビングしてキャッチしようとしたが、川島と日本のゴールの間にいたシリア選手がそのボールを奪おうとして川島とぶつかり、転倒した。副審はオフサイドの旗を揚げたが、イラン人の主審はオフサイドを認めず、川島のファウルだとして退場を命じ、PKを宣告した。日本サッカー協会は試合後、ビデオで確認したうえで誤審と判断して抗議し、川島の次戦出場停止処分の取り消しを求めたが認められなかった。

◆中国大会では「君が代」にブーイングも

04年の中国大会は、尖閣諸島の領有権などを巡り日中関係が悪化していた中で行われた。日本代表の試合では、中国人の観客が「君が代」に大ブーイングをし、起立も拒否するなど、反日的な行動を取り、問題となった。

 準々決勝のヨルダン戦、日中戦争中に旧日本軍による空爆があった重慶での試合ということもあって、日本代表は中国人観客に大ブーイングを浴びせられる中でのプレーを余儀なくされた。日本はPK戦で2人が連続してはずすという絶体絶命の状況から、宮本恒靖(G大阪監督)が審判にグラウンド状況の悪さを指摘して使用ゴールを変えさせ、川口能活(今季限りで引退)が神がかり的なセーブを連発して勝利に導くというドラマが生まれ、中国との決勝に進んだ。

 中国政府は4年後に迫っていた北京五輪への影響を危惧し、決勝戦の会場に1万2000人の警備員を動員して過激な行動を抑え込みにかかった。しかし、日本が3対1で勝利して優勝すると、結果に納得のいかない中国サポーターの一部が、試合後に日の丸を燃やしたり、日本代表チームのバスにペットボトルを投げつけたりするなどの過激な行動に出た。

 日本代表は過去のアジア杯で、こうした“敵”との戦いも強いられてきた。しかし、今回はこうした状況が変わる可能性がある。

◆日韓戦に異変、VARは味方か

日本の宿敵ともいえる韓国代表の様子が、今回はこれまでと少し違う。メンバーの中にJリーグのチームに所属していたり、海外で日本代表の選手とチームメートであったりする選手が何人もいて、日韓代表の選手同士の交流がかつてないほど進んでいるからだ。

 「猿のまね」で物議を醸した奇誠庸も、イングランドのニューカッスルで武藤嘉紀とチームメート。FWの黄義助(ファン・ウィジョ)は今季、G大阪をけん引した。国を背負い、韓国代表のユニホームを着れば、強烈なライバル心をむきだしにして向かってくるだろうが、プレー外で問題が起きる可能性はこれまでよりも低いのではないか。

 ルールに関して期待できる点もある。準々決勝以降の試合には、今大会からW杯と同様に、映像を使った判定補助システム「ビデオ・アシスタントレフェリー」(VAR)が導入される。仮に“中東の笛”とでも呼べそうな偏った判定があっても、映像が公正な判定へと導いてくれるはずだ。

 しかし、1次リーグと決勝トーナメント1回戦ではVARは適用されない。5日の開幕戦、UAE対バーレーン戦では、地元UAEがリードされる中、微妙な判定からUAEにPKが与えられ、これを決めて引き分けとなった。こんなケースもあるので、注意が必要だろう。

1/9(水) 17:31配信 読売新聞
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