●選手にとってブーイングは“不都合な真実”

スタジアムでのブーイングは、選手のメンタルにどのように作用するのだろうか?
「ブーイングをバネに、という話がよくありますよね? でも、あれを受けて良い気持ちになるはずはないですよ。正直、とてもネガティブな気持ちになります」

あるJリーガーは言ったが、同じ意見がほとんどだろう。罵られ、嘲られる。これがポジティブではないのは、想像の範疇だ。
特に、味方と思っていたホームのファン・サポーターから受ける非難の罵詈雑言は、堪えるという。どうしようもできないのに――。そのやるせなさは、相当なものだろう。

「僕は、ブーイング賛同派ではないよ。ブーイングを受けることで、チームは弱体化する。個人的には拍手賛同派だ」
そう語ったのは、レアル・マドリーのMFマルコス・ジョレンテである。ホームで勝利した試合にもかかわらず、容赦ないブーイングを受けた後のコメントだった。

2018−19シーズンのマドリーは、国内リーグで近年にないほどの不振に喘いでいる。サンチャゴ・ベルナベウのファンは、
その戦い方に失望した。結果、負けた時は言うまでもなく、勝っても非難の口笛で憂さを晴らすようになった。

「自分だけでなく、チームメイトに対してもブーイングが浴びせられる。それは、とてもやるせない。もっと良いプレーができる、と信じてやるしかないんだけど……」

ジョレンテは苦しい心の内を明かしている。
チームメイトであるイスコは、マドリディスタの辛辣なブーイングに対し、やり返してしまった。これが炎上……さらに非難を浴びる羽目となった。

選手は、プレーがうまくいっていないことに気付いている。それを改めて指摘され、厳しい言葉を浴びせられる。
選手にとって、ブーイングは“不都合な真実”であり、分かっていても、どうにもならない。そこで生じる不甲斐なさに、彼ら自身も苦しんでいるのだ。
ブーイングは、精神的に「健全」ではない。

しかし一方で、ファンの要求の高いクラブほど、勝利を積み重ねているという現象も起きているのだ。

●ファンの熱を活かしたA・マドリーの闘将

「厳しい要求をされるのがマドリーというクラブ、ということは弁えているよ。いつも勝つことが求められ、勝つだけでは満足してもらえない。
ファンが、我々選手の奮起を促してくれるのには感謝しているよ。ただ、できるならブーイングよりも拍手が欲しいんだけどね」

ジョレンテはこう洩らしているが、ブーイングと拍手はバランスが難しいということか。悪いプレーを見逃され、延々と声援を送られ続けると、それはそれで選手の感覚が鈍化してしまう。
ベルナベウのファンと選手が一体となった時、その熱気は想像を超える。愛憎が極端だからこそ、それだけのエネルギーが出る。情熱が混ざり合うことで、思った以上のプレーが生まれるのだ。

彼らのライバルであるアトレティコ・マドリーはかつて、ファンのあり余る熱をうまく扱うことができなかった。クラブを愛し過ぎるファンが多く、自ら傷つけるように、チームを非難してダメージを与えていた。
その流れを劇的に変えたのが、2011年に監督に就任したディエゴ・シメオネだ。スタジアムの熱を受けながら、ベンチで闘争心を見せ、選手にスピリットを伝播させ、さらにスタジアム全体を煽った。

その結果、士気の高さで相手を打ち破るチームに生まれ変わったのだ。「ピッチでは、その人間性を見せろ!」シメオネは言う。
ブーイングを克服し、拍手に変えられる選手だけが、最高の舞台に立つことを許されるのだ。 

1/6(日) 12:26配信 サッカーダイジェスト 全文
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