平成もあと4カ月弱で終わろうというのに、テレビの世界は昭和のままで止まっているのだろうか。そんなことを思わせる番組がある。
日曜昼に放送される情報番組「噂の! 東京マガジン」(TBS系)で、素人の若い女性にレシピなしで料理に挑戦させる「平成の常識・やって! TRY」というコーナーだ。
違和感を抱いているのは筆者だけではないようで、ネットで検索すると「やって! TRYは女性差別か」といったブログなどが散見される。

「平成の常識・やって! TRY」は、1989年に番組が始まって1年以内に加わった人気コーナーだ。内容は、町中にキッチンをセットし、数人の若い女性に定番料理を作らせるというもの。
ロケのVTR終了後は、スタジオでプロの料理人による解説付きの実演がある。ロケの現場でセットされた調理台には、さまざまな食材、調理道具が並んでおり、その中には、目的の料理には必要がない食材や調理道具も含まれている。

■失敗する女性には面白おかしいツッコミが

レシピはないので、ふだん料理をしていない女性や、その料理を作ったことがない女性は、思いがけない方法で調理して失敗する場合がある。
たとえば、シュウマイを作るのに蒸籠(せいろ)を直接コンロに載せ、シュウマイを燃やしてしまう女性がいる。親子丼を作ろうと丸鶏に手を伸ばし「これ、豚肉?」と戸惑う女性もいた。

カツレツの回では、低温で揚げてベチャベチャにした女性が友人に「油の温度が低かった」と指摘される。友人の女性や彼氏、母親などの同伴者が、料理法を知っていて完成後に知識を披露することもあれば、
完成品を食べて、「味がない」「べちょべちょ」「しょうゆの味しかしない」と失敗のヒドさを指摘することもある。同伴者が料理法を知ってそうな雰囲気が気になる。もしかして、あえてその料理ができない女性を選んで撮影しているのか?  

調理中は、随所に男性ナレーションによるツッコミが入る。カツレツを作るはずが生ハムを揚げてしまう女性には、「それ生ハムだもん」と一言。
フライパンで牛肉を焼き始めてから、揚げるべきことに気づき衣をつける女性には、「なんだ恥の上塗りかい」。さらに、フライパンに卵を敷いて肉を包み、「『レツ』はオムレツみたいな(意味)」と説明するこの女性に、「ウソみたいな展開」とツッコむ。

2018年12月2日放送回のテーマは、サバの味噌煮だった。カツオだしの中に、筒切りにしてワタを取ったサバを立てて入れていく女性。頭と尻尾も立てて入れ、「あらあら何の儀式よ」とツッコまれる。
この回では、歴代の彼氏に作ってきたという27歳会社員で彼氏なしの女性が、別れた彼氏を思い出して泣きそうになりつつ、手際よく料理して作り上げる例もあった。サバの湯通しまでした完成品を友人たちも絶賛。
しかしVTR終了後、スタジオでは元NHKニュースキャスターの森本毅郎氏が「歴代の彼氏のおかげだよ!」とツッコむのである。

作り方を知らないがゆえの失敗には、笑いを取れる部分があるのはわかる。放送されるのは、実際に作った人たちの一部だろうから、失敗の仕方がより「面白い人」を選んで放送していると思われる。
失敗をネタにするお笑い文化が社会的に共有されているからこそ、「やって! TRY」は30年近く続いてきたのだろう。

1/6(日) 5:00配信 東洋経済 全文
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190106-00258634-toyo-soci