相撲協会、引退勧告も──。そんな見出しが躍った12月20日のスポーツ各紙。度重なる暴力問題に対処すべく、日本相撲協会が厳罰化を示したという内容の記事だったが、稀勢の里のことだと誤解した読者もいらしたのではないだろうか。

 その前日、冬巡業の全休が報じられた稀勢の里。調整遅れが隠せぬ状況となった時点で、スポーツ各紙は、“横審(横綱審議委員会)では初場所の出場を強く望む委員も多く、仮に初場所を全休すれば、最悪の場合、引退勧告が決議される可能性も否めない”という表現で彼のピンチを伝えていた。

「横審の某委員が『横綱の引退は横審が決めるものではなく、ご自分で決めるもの。初場所を全休すれば、何らかの決断を下さないといけない』と言っていたのが“引退勧告も”という記事になったんです。親方衆からも『日本人だから大目に見られてきたけど、これがモンゴル人だったら何を言われているかわからないでしょ』と言われています。休みすぎだ、という話です」(相撲担当記者)

 稀勢の里は、17年春場所の日馬富士戦で左胸の大けがを負ってから、無理して出場しては途中休場というパターンを繰り返してきた。その結果、ワースト記録の8場所連続休場。進退を懸けた秋場所は、何とか皆勤して10勝5敗で乗り切ったが、一人横綱で臨んだ九州場所は、初日から4連敗した。“87年ぶり”という横綱のワースト記録に並び、途中休場。横審で、異例の“激励”が決議された。

「九州場所で潮目が変わりましたよね。一人横綱として踏ん張れなかったのがねぇ……」と話すベテラン記者。1月の初場所を仮に全休した場合、横審は本当に引退勧告するのだろうか。

「横審は日本相撲協会の諮問機関。決議は、理事長や協会の執行部の意向を反映したものです。要は、協会幹部が稀勢の里を必要だと考えているか。稀勢の里だけ見たら、そりゃ、ふがいなさが目立ちます。だけどあと2人の横綱も故障がちで、横綱候補も万全とは言えない。大相撲は興行で横綱は大事な看板役者ですから、この状況で稀勢の里の肩をたたくことはないのでは」(前出ベテラン記者)

 例えば、九州で初優勝した貴景勝は1月場所で大関獲りだと言われているが、「九州では白鵬ら上位が休場していたし、彼らが復帰してきたらどうなるか、まだわかりません」(前出担当記者)。また、貴景勝と優勝争いした大関・高安も「あれは“優勝に準ずる成績”のはず。1月場所は横綱獲りだと騒がれてもいいのに、親方衆からも『そうだっけ?』なんて言われている始末で(笑)、全然注目されてません」(同前)

 進退は稀勢の里自身の頑張りはもちろん、上位力士の成績にもよるのだ。1月場所が待ち遠しい。(渡辺勘郎)

※週刊朝日  2019年1月4‐11日合併号

12/26(水) 11:30配信 AERA dot.
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