■あの人はいま 元アーセナル 宮市亮さん(32歳)

2022年、ヨーロッパチャンピオンズリーグ決勝。 それを、TVで見つめる男がいた。
20歳で将来を嘱望されプレミアリーグに挑戦した、宮市さんは今……

「あの頃は若かったですね(笑)」
若き日を回想する宮市は、どこか寂しげだ。
「未だに昔の夢を見ることがあるんですよ。俺がプレミアリーグで大活躍する夢を」

中京大中京高を卒業後、Jリーグクラブには入団せず、単身イングランドに渡った。
名門アーセナルの名将アーセン・ベンゲル監督に見いだされ将来を期待されるも、プレミアの壁は厚くオランダのフェイエノールトにレンタル移籍した。
移籍先のフェイエノールトではレギュラーを掴み活躍。翌シーズンアーセナルに復帰するも出番に恵まれずボルトンに再レンタルされたものの、怪我がちとなり退団。
イングランドでの活躍はかなわずドイツ・ブンデスリーガ2部のザンクトパウリに都落ちした。
しかし、そこでも再び膝に重傷を負い再起不能に。
何とか治療をしたものの退団を余儀なくされ、帰国しJFLのマルヤス工業に入団。しかし、全盛期のスピードは戻らず、若手や新加入選手の台頭に押され目立った活躍はできず30歳の若さで引退を決意。
今は味噌かつ店を営む傍ら、地元の少年サッカーチームのコーチを勤めている。

●暖簾の屋号の文字は元アーセナル監督のアーセン・ベンゲル氏の手によるものだ
「いらっしゃい」。名古屋鉄道豊田線豊田駅東口から歩いて50分。「宮とん」のえび茶色の暖簾をくぐって店内に入ると、白いタオルを頭に巻いた宮市さんと奥さんの元気な声に迎えられた。

「去年の4月にオープンしました。暖簾の『宮とん』という文字はベンゲル監督に左手で
書いていただいたものだし、開店に合わせてスポーツ紙やテレビでも取り上げてもらった
おかげで、県外から足を運んでくださるお客さんが多かったのはうれしかったですね」

●とはいえ、その分、プレッシャーも大きかったという。
「味噌カツ好きは新幹線に乗って本場・名古屋まで食べに出かける時代でしょ。
ボクが作る味噌かつは、かつの上にチョンヨン兄さん直伝のキムチを乗せるのが特徴だから、とんかつにキムチなど乗せるなとネトウヨは腹立たしいようなんです。
それで怒られちゃったこともあるけど、それも修業のうち。我慢、我慢です」

●かつてのライバルで現バルセロナの宇佐美や、リバプール所属の香川ついて尋ねると……
「あいつら俺より下手だったんですけどね(笑) 」と、おどけ
「足が速いだけでは通用しないと思いました」
「怪我さえ無ければって…歯がゆいですけど。」
「今はもう現役に未練はありません。今度は、教え子でプレミアリーグを目指しますよ(笑)」

(写真)味噌かつを手に持つ宮市さん。