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 ペットボトルについては「瞬間的に浮かんだんですが、我ながら良いアイデアだと思いました。現代性とつながる上に『これは笑えるぞ』と。手足が車輪のように回転する中、ペットボトルが1個だけある。気付いた人はクスッと笑えると思うんですよ」と手応え。「前面には出しませんが、美術にとってユーモアは非常に重要。おじいさんの(十七代目)勘三郎さんから中村屋自体がコミカル。勘九郎さんも中村屋の伝統を受け継いでいるので、NHKさんは良い人を主役に選ばれましたね」と太鼓判を押した。

 出身校は兵庫県立西脇高校。同校から63年に工業課程を分離した兵庫県立西脇工業は全国高校駅伝優勝8回の強豪という“縁”もある。「僕もマラソンが大好きなので『いだてん』のポスターは僕のテーマだと思いました。他の人に依頼されなくて良かったです」と茶目っ気たっぷり。「マラソンは、まさに人生そのもの。スタートからゴールは1つの魂が生まれてから死ぬまで、2時間何分かの中に人生が全部描かれていると思うんです。僕がマラソンを見る時は、人生も絡めているわけです。だから、おもしろいんですよ」と持論を展開した。

 横尾氏の起用理由について、NHKは「1960年代に感じるとてつもない時代のうねりや高揚感を“今”の感覚で表現できるのは横尾忠則さんしかいませんでした。64年の東京オリンピックのデザインチームの一員であり、現在に至るまで世界を刺激し続けてきた横尾さんのエネルギーが『いだてん』には必要だったのです」と説明。ポスターは今月下旬から全国のNHKなどで掲出される。

 ◆横尾 忠則(よこお・ただのり)1936年(昭11)6月27日、兵庫県西脇市生まれ。72年、ニューヨーク近代美術館で個展を開催。以降、幅広いジャンルで唯一無二の作品を発表し続け、国内外80の美術館に作品が収蔵されるなど国際的な評価を得ている。97年から「週刊新潮」の表紙絵を担当。2012年、神戸市に横尾忠則現代美術館、13年、香川県小豆島に豊島横尾館が開館した。