勝率5割にも届かなかった今年の巨人。だから、原辰徳監督(60)に課せられた使命は、来季の「絶対優勝」だそうだが、見境のない金権補強に寄せられるのは、優勝どころか、チームが瓦解するという悲鳴――。

 今年の打率が2割8分9厘といっても、出場試合は77。そんなオリックスの中島宏之内野手(36)を推定年俸1億5千万円で、続いて、出場試合が40だけだった西武の炭谷銀仁朗捕手(31)を、3年総額6億円で獲得した原巨人。大リーグのパドレスのビヤヌエバ内野手(27)とも年俸300万ドル(約3億3千万円)で契約したという。

 で、巨人担当記者の耳に入るのは、選手たちの嘆きばかりだという。

「ビヤヌエバが来るので阿部慎之助が捕手に戻る。なのに炭谷も加われば、小林、宇佐見、大城という結果を出して形ができてきた選手がひっくり返されてしまう。また、西武が大リーグに行くのを引き止めなかったような中島を使うために、若手の出番が減って、なのにスタートダッシュで中島が低迷したら、巨人にとってもすごくマイナスです」

 中軸打線も、

「今年ブレークした岡本和真を大抜擢したのは、2軍監督時代の斎藤雅樹。その斎藤が辞めて後ろ盾が消えたところに、岡本が守ってきた一塁はビヤヌエバに任されるので不安になっている。そのビヤヌエバは左投手しか打てず、右投手の外に逃げるスライダーには全然対応できません」

 そして、この記者は、

「原監督の構想は、ちぐはぐで一貫性がない」

 と断じるのである。

とにかく来年のため

 だが、巨人担当のベテランデスクは、「原が焦るわけもわかる」と、こう話す。

「巨人は4年続けて優勝を逃したことはあっても、5年連続はない。来年優勝できないと史上初です。しかも、平成になってからの日本一の回数でホークスに抜かれ、辛うじて観客動員数が1位なのも、球場のキャパが大きいから。つまり、球界の盟主といわれた巨人存亡の機なのです。だから優勝経験豊富な原を引っ張り、ナベツネ氏もミスターも病身のいま、編成、ドラフト、トレード、FAの全権を一任した。一方、原にすれば、これで勝てなければメンツが立たない。遮二無二やるわけです」

 遮二無二ついでに、広島の丸佳浩外野手(29)に5年35億円を提示。何度もつぶれているオリックスの金子千尋投手(35)や、故障してマリナーズを退団した岩隈久志投手(37)にも食指を動かしているとか。

 だが、巨人OBで野球評論家の広岡達朗氏は、

「昔の巨人は選手を厳しく教えて、“このポジションは俺だ”と自信を持たせて使ったのに、原はよそで育ったいい選手がくれば勝てると思っている。でも、それではコーチはなにもせんでもいい。教え方一つでチームは強くも弱くもなるのに、よそから獲るだけでは監督もコーチも勉強しない。カネで選手を集めないと勝てなくなるだけです」

 そして、最後に言った。

「炭谷? 捕手は阿部もレギュラーなのに何人もどうするの? 誰を育てるの? 中島? もう36歳でしょ。なんで獲るの?」

 それが遮二無二突進して左右を見ない怖さ。

「週刊新潮」2018年12月6日号 掲載

12/6(木) 5:58配信 デイリー新潮
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181206-00552813-shincho-base