サッカーJ3・鹿児島ユナイテッドFCがクラブ史上初のJ2昇格を決めた試合では、観客席にコレオグラフィー(巨大な人文字)で「UP to J2」の文字が書かれ、インターネット上でも話題を集めた。

 クラブ史上最大の山場となった一戦に詰めかけたのは1万916人。1試合平均3000人ほどのJ3で、なぜこれだけのサポーターが集まり、異例と言えるコレオグラフィーを実現できたのか。発案したサポーターとクラブ代表に話を聞いた。

■「これは勢いに乗っちゃうなぁ」

 J2入りがかかっていた2018年11月25日のJ3第33節・アスルクラロ沼津戦は、サポーターの熱量も特別だった。

 ホーム・白波スタジアム(鹿児島市)には1万人以上の観客が集まり、バックスタンドの鹿児島サポーターが試合開始直前、巨大な市松模様と「UP to J2」のコレオグラフィーを描いた。背後には桜島も重なった。ストリーミングサービス「ダゾーン」の中継でも大きく映され、ツイッターでは、

  「鹿児島ユナイテッドFCのコレオ。クオリティ高い!」
  「桜島をバックに UP to J2」
  「とてもJ3の試合とは思えない光景ですね」
  「鹿児島さんのコレオが素晴らしかった!! これは勢いに乗っちゃうなぁ」

といった声が相次ぎ寄せられた。スタジアムで写真を撮ってアップするユーザーも続出した。

 今回コレオグラフィーを企画したサポーターの神脇摩侑(かみわきまゆ)さん(25)は、J-CASTニュースの取材に「ひとつになって選手に何か伝えたいと思いました」と話す。1週間ほど前、サポーター団体に「コレオをしたい」と伝え、協力を募った。普段の集客規模に鑑みて最初は「市松模様」だけを考えたが、物足りなかった。「J2」の文字を書こうと提案し、さらに話し合いの末、よりメッセージ性の強い「UP to J2」になったという。

 「もともと(J1)セレッソ大阪のサポーターなんですよ」という神脇さん。月に1、2回はC大阪戦を見に行くといい、昨季の天皇杯決勝・横浜F・マリノス戦でもコレオグラフィーを手伝ったため、「流れや感覚は何となく分かっていました」という。並行して鹿児島も、16年にJ3入りしてから応援するようになり「地元なので違う気持ちになりますね」と話す。クラブスタッフとは「とても仲が良くて、代表もフレンドリーなんですよ。家族みたいな感じです。クラブと距離が近いからコレオもできたと思います」と笑った。


「クラブの存在が日常化していく」

 「サポーターの皆さんとはよくお話ししますね」と取材に話すのは、鹿児島ユナイテッドFCの徳重剛代表(41)。

  「コレオをやりたいと私たちに話があったのは、前節(11月17日・藤枝MYFC戦)が終わった直後でした。クラブとしては前日準備のためにスタジアムを開放するなど窓口業務は少しやりました。でもサポーターさんが企画・実行されたことで、クラブとしてはありがたいです。嬉しいですよね」

 地元2クラブが統合して14年に誕生した鹿児島ユナイテッドFCは、JFLを経て16年にJ3へ参入した。ホーム戦の平均観客動員数は、17年の3508人から18年は4040人へと約15%アップ。着実にサポーターを獲得している。

 その裏には、クラブの確かな集客への施策があるようだ。徳重氏は「地域密着の活動は大事にしています」と話す。

  「今年は11月までに230回ほど何らかの活動をしてきました。選手はサッカー教室、市とのイベント、県立図書館での読み聞かせなどを通じて地域の方々と触れ合い、地元のお祭りにも参加させてもらいました。直接声をかけてもらったり写真を撮ったりして、そのつながりで力をいただいています。
  
  活動が360回を超えたらほぼ毎日1回。そうなるとクラブの存在が日常化していくのではないかと思います。試合の日だけでなく、鹿児島ユナイテッドが生活の中に当たり前にあるようにしたいです。そのために必要なのは積み重ね。今回1万人以上も足を運んでいただけたのは、もしかしたら今までスタジアムに行くほどではなかったけど応援はしてくださっていて、J2昇格がかかる試合ならと思われた方々がいらっしゃったのかもしれません」