負け惜しみか、それとも偽らざる本音か。西武からFA宣言した浅村栄斗内野手(28)の獲得に失敗したソフトバンクの王貞治球団会長(78)が本紙の直撃に応じ、FA補強のメリットとデメリット、若手の台頭への思いなどを熱く語った。
今年はレギュラーシーズン2位からの勝ち上がりながら2年連続の日本一を達成。3年連続の頂点に向けて、ベテランの奮起も欠かせないと訴えた。

 FA市場のメインターゲットだった浅村は楽天入り。ソフトバンクにとっては手痛い事態となった。ただ、落ち込んでばかりはいられない。王球団会長はチーム、そして若手ナインにハッパをかけるようにこう強く訴えた。

「FAというのは両方あるわけだよ。うまくいけば若手にとっては出るチャンスが少なくなるが、うまくいかなければ若手の伸びるチャンスが生まれるということでね。どうなってもチームとして前へ進めばいい。チームなりにやっていけばいいこと」

 確かにFAで戦力をかき集めた弊害として、生え抜きの若手が伸び悩むという例は他球団にも多々ある。逆にプロ入り時は無名でも自力でチャンスをつかんで羽ばたく若手もいる。その最たる例が“甲斐キャノン”の異名で大ブレークした甲斐だろう。
自慢の強肩だけでなく12球団一の選手層を誇るチーム内で自らを磨いたことで、総合力もアップして現在の地位にまで上り詰めた。王会長が望むのは、甲斐に続く若手の台頭だ。

 かねて王会長は「とにかくチーム内の競争が激しいからさ。(選手たちは)チーム内で勝つための技術向上を図っている。それこそ2年前だったら誰も知らなかった拓也(甲斐)が、ああやって勝ち取ったことで、あれだけ(メディアなどで)大きく扱われる。野球界は自分が頑張ればそういうチャンスが起きるんだよ」とも話していた。

 浅村の補強が不要だったと言えば強がりになるが、若手のブレークに加えて実績十分のメンツが揃うベテラン組の踏ん張りがあれば、補うことはできる。
 王会長は初のベストナインに選ばれた35歳の松田宣についても「初めてというのが意外だが、2度、3度とチャレンジしてほしい。今は体の手入れとか鍛え方、本人たちの意識もある。40歳くらいまでやる強い気持ちでね。体の方がついていくから」と声を大にした。

 過去を振り返っても仕方がない。「ベテランだけの力でも若手の力だけでもダメ。一年戦うためには両方必要だから」。王会長の目は早くも日本一3連覇に向いている。


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