大相撲九州場所2日目(12日、福岡国際センター、観衆=6600)2横綱の休場に伴い、自身初の「一人横綱」となった稀勢の里(32)は平幕妙義龍(32)に寄り倒され、2連敗と早くも厳しい状況に陥った。横綱として11場所目だが、今場所を含め出場した7場所で連敗発進は初めて。初日に黒星を喫した4場所はいずれも途中休場に追い込まれている。早くも休場のピンチに立たされたが、救いはまだ序盤戦。課題修正の時間は十分に残されている。

 尻から崩れた稀勢の里が、横転しながら土俵下へ落ちた。腹ばい状態から立ち上がる様子を見守る館内に、座布団は舞わない…。

 自身初の「一人横綱」で2連敗。取組後に直行した風呂場から叫び声が上がった。その後、東の支度部屋では最後まで無言を通し、重たげな空気がまとわりついた。

 横綱昇進後、今場所を含め出場した7場所で初日からの連敗は初めて。初日に黒星を喫した4場所はいずれも途中休場に追い込まれており、連敗発進は「休場危機」といわざるを得ない状況だ。

 審判長として土俵下で見守った錦戸審判部副部長(56)=元関脇水戸泉=は「気持ちと体の歯車が狂っちゃっているね」。白鵬、鶴竜の2横綱が休場して「せっかく優勝するチャンスだったのに…」と嘆いた。

 それほど、失策が重なった。妙義龍の左差しを右から抱え込み、左の差し手争い。左脇を固めて出た稀勢の里だが、腰が高く巻き替えられてもろ差しを許す。辛抱できず、左から小手投げ。これが呼び込むかたちとなって一気に寄り倒された。八角理事長(55)=元横綱北勝海=は「我慢するところで投げを打って、自分を軽くしてしまった」。

 小結貴景勝にはたき込まれた初日の相撲は21秒4。この日も34秒2。連日の幕内最長タイムは慎重ともいえる半面、相手の動きに合わせているようにも映る。

 民間調査会社「ブランド総合研究所」による「都道府県魅力度ランキング2018」で稀勢の里の故郷、牛久市のある茨城県は6年連続の最下位だった。横綱は平成18年に「いばらき大使」に就任。29年度は県の魅力をPRするイメージキャラクターに起用された。

 県民性を重ねたキャッチフレーズ『ひたむき、まえむき、いばらき』と刷られたキャンペーンポスターが全国へ配布された。本人も「(イメージアップには)相撲に勝つことが一番」と気にかけていたが、自身の長期休場と重なってしまった。

 8場所連続休場明けとなった9月の秋場所では2桁の10勝を挙げ進退の危機を乗り越えたが、再び漂い始めた暗雲。実務を担当する茨城県・営業戦略部プロモーション戦略チームでは「困難な状況下にあっても常に正攻法。真っ向勝負を挑む横綱の姿勢にこそ県民のイメージが重なる。真の復活を願う」。

 取組を終えてから約2時間半後、稀勢の里は田子ノ浦部屋宿舎に集まった報道陣に「頑張ります」と笑顔を見せた。横綱の魅力が、今度こそ地元の魅力度も引き上げる。


11/13(火) 7:00配信 サンケイスポーツ
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