一人一人が自分以外にあまり関心がない海外では問題ないのですが、繰り返すように日本は他人に関心があり暇な人が結構いるので、怨念をあびると怖いのです。

 とはいえ、「出過ぎる杭は打たれない」ので、そこまで行けばいいかもしれませんが、私はあえて「最初から出なくてもいい」と思っています。知る人ぞ知る存在がちょうどいいのではないでしょうか?

 もう一つの提言は、

・人格者(ふう)になる

 世界で成功できるリーダー像とは、「人格者然としているが少し扱いにくく、扱いまちがえると怖い人」といえます。

 まず、感情が安定していることが欠かせません。当然、すぐキレるアホじゃ相手にもされません。一方で、あまりに人格者然、紳士然としているのもマズイです。その上で、時に緊張感を漂わせ、怖い印象を与えることも大事です。それは、パワハラ的な、アホな怖さではありません。複雑で重層的な人格を醸し出すことです。そうした振る舞いを行わないと、交渉では不利になります。

 ベラベラ余計なことを話さないことも非常に大事です。プレッシャーを感じながら平然と沈黙を保てるかです。

 国際舞台では感情が安定した人格者であることは当然に求められ、そうでないと相手にもされませんが、同時に怖さがないと確実に舐められます。相手はこちらの髪の毛の先からつま先まで見ながらブラフ(はったり)を仕掛けて来ます。

 もちろん怖さには根拠が必要です。相手が怖がる理由が、こちらが確実に持っている“武器”でないと、逆にさらに舐められ、相手にされなくなります。そういう武器の存在をさらりと相手が気分を害さない形で、見せつけておくことも大事です。

 交渉前には、徹底的に相手の手の内を何通りにも読み、シナリオとそれへの対応策を各々準備し、実際の交渉の場ではさらに相手を見て即興的に対応を変えていく必要があります。

 こちらの感情が読み取られないように、「目標は成果の下限の八割の出来で良し」とする遠慮がちな考え方もありますが、海外では、日本国内と違って「欲しいものを欲しい」とはっきり言うことは奨励されるくらいですから、遠慮は必要ありません。

つづく