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「撮影本番で立てなかった場合でも、そのまま放送するつもりだったので、数原くんには『一発勝負やからな』と説明していました。普段は手持ちカメラだけでロケをするのですが、モンキーターンをする瞬間に腰を上げるところをアップで撮影したかったので、スーパースローカメラもセット。中継車を含め100万円くらい経費がかかりました。『たった数秒のためにそこまで要るか?』と上司に難色を示されましたが、説き伏せました」

 本番では、後ろの選手が『モンキーターン!』と声をかけると同時に数原少年はしっかり立ち上がり、その雄姿もスローカメラで鮮明に捉えられていた。レースも1着になり、局長を務める西田敏行もスタジオでVTRを見た後、涙をハンカチで拭いながら『大感動や』『素晴らしいね』と絶賛した。

 あれから15年、デビュー直前の数原選手に当時の思い出を聞いた。

「怖かったという記憶はないですが、エンジン音がすごく大きくて『こんなに大きな音なんや』という印象は強く残っています。周りから聞いた話では、撮影が終わった後も『楽しかった』と繰り返し喜んでいたそうです」

 来たるプロデビュー当日、数原選手には“奇跡”が待っていた。何と8日のレースには、15年前の撮影時に同乗し、後ろで操縦してくれた水野要選手(64)も出走することになったのだ。「師弟対決」を前に、数原選手が語る。

「まだプロになる前に水野さんから『はよう(プロの試験に)受からんと(俺は)辞めるぞ、待たれへんぞ』と言われ、合格した際も電話で『おめでとう、良かったな』と声をかけていただきました。競艇選手になるきっかけの選手でもあり、本当に感謝しています」

 競艇の世界では地元の先輩選手に指導を受ける「師弟関係」があるが、水野選手からは「(年齢的に)俺は無理やぞ」と言われているという。幼い頃に手ほどきを受けた「師匠」に向けて数原選手はこう話す。

「水野さんに『1人でもモンキーターンができるようになりましたよ』というところを見せて恩返しをしたい。選手として勝ちにこだわりたいですね。『ナイトスクープ』では僕が夢をかなえていただきましたが、今度は僕が子供たちに夢を与えるような選手になりたい」

 15年の時を経た師弟対決の結果はいかに。

終わり