あっという間に老若男女が「渋ハロ」の略称を覚えてしまった。渋谷におけるハロウィン騒動が社会問題化している。全面禁止や有料化など様々な提案が行われているが、テレビの世界では「番組におけるモザイク処理」にも注目が集まった。

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 時系列で見てみる。まずは10月29日に放送された「情報プレゼンター とくダネ!」(フジテレビ系列:毎週月〜金・午前8時〜午前9時55分)だ。27日の土曜深夜に暴徒が軽トラックを横転させる事件が発生。喧嘩や痴漢、盗撮などで逮捕者が出た騒動を経て、29日の月曜を迎えた。

 司会の小倉智昭(71)は「逮捕者もっと出てもいいと思うけどね」と怒り心頭。暴徒の顔にモザイクがかけられていることにも触れ「顔隠しているのは青少年の可能性があるからということ?」と不満を示した。

 翌30日の「バイキング」(フジテレビ系列:毎週月〜金:午前11時55分〜午後1時45分)でも、司会の坂上忍(51)がモザイクに言及。標識に登る若者の顔に処理が施されているのを「腹が立つのはこうやって隠すじゃん。なんで?」と疑問を投げかけた。

 この晩も依然として「渋ハロ」では暴徒が跋扈し、逮捕者は増加した。月が変わって11月1日、「バイキング」はハロウィン問題の続報を放送した。狼藉者が傍若無人の限りを尽くすVTRを流すと、木曜レギュラーの薬丸裕英(52)が持論を展開した。

「こんなの俺は、顔とかにモザイクとかかけないで、これは恥ずかしいということを世の中にさらしてやればいい。こういうことは恥ずかしいんだよというのは分からせないと」

 司会の坂上も「なんであの子たちを守っているのか、さっぱり分からないですよ」と同意を示した。

結局は責任逃れ

 民放キー局の制作スタッフも「やはり人気のトップタレントだけあって、鋭い視点でテレビ局の偽善を見抜いていましたね」と苦笑する。

「モザイク処理はスタッフの間でも頭痛のタネです。一応は局に基準のようなものがあるのですが、結局のところ現場は、プロデューサーにお伺いを立てます。そのためプロデューサーによって異なる指示が出ることもあります。同じテレビ局なのにモザイクをかけたり、かけなかったりと、異なるVTRが流れてしまうんです」

 小倉智昭は少年法について言及したが、実のところ、そんなに深い話ではないという。プロデューサーはクレームや局の責任問題に発展するのを恐れているだけなのだ。

「事件取材のVTRだと、午前のワイドショーでは顔を出していた近隣住民が、午後にはモザイクがかかっているということもありますね。午前の番組を見た本人が抗議してきたなど様々な理由がありますが、それだけクレームを嫌がるわけです。モザイクをどこまで強くするのか、弱くするのかというのも、微妙な問題です。作り手の一人として、民放キー局で統一見解を作ってほしい、という気持ちになることもありますよ」(同・制作スタッフ)

 1点だけ断言できるのは、年々、モザイクをかける頻度は増しているということだ。プライバシー保護が最優先になってしまっている。

「今は街頭インタビューでさえ、承諾書や誓約書を書いてもらう時代になりました。もちろん、近年になって登場した措置です。プライバシーを守るためにモザイクをかけるということ自体は、昭和の時代から普通に行われていました。ただ今は、強めのモザイクを、どんな人にでもかけるようになってきたと思います。その象徴が、“渋ハロ”で暴れる連中にもモザイクをかけるというVTRでしょう」(同・制作スタッフ)

 インターネットの発達も無視できない。テレビ局が素顔を放送してしまうと、VTRの画像や違法アップロードの動画があっという間に拡散する。

 その結果、本人の特定が容易になる。特定されれば誹謗中傷が炎上し、個人情報が暴露される。その責任をテレビ局に求めようとする動きが出てもおかしくない。ハロウィンでバカ騒ぎに興じたグループが、「テレビ局が俺たちに無断で素顔を放送し、プライバシーを毀損した」と精神的慰謝料を求めて訴訟を起こす――。こんなリスクを想定しなければならなくなったのだ。

 小倉、坂上、薬丸の主張を、正論と受け止める方は少なくないだろう。だがテレビ局の制作現場では、彼らの正論を無視するほかないということか。

11/6(火) 7:00配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181106-00551325-shincho-soci