>>1の続き

 萌景さんはもともと通信制の高校に通っていたが、全日制への転学を希望し、2月に私立高校を受験して見事に合格。グループのメンバーやスタッフからも祝福されていた。

「ただ、高校入学にかかる費用の計20数万円がどうしても用意できないとのことでした。聞くと、“お義父さんが私にはお金を一切使わないと言っている”とのこと。私たち事務所がサポートしないと、萌景さんが学校に通えない状況でした」(佐々木社長)

 遺族の代理人は「萌景さんが勝手に事務所と進学の話を進めた。だから、家族は表立って積極的に進学資金を用意しなかった」と説明する。

 萌景さんは小学生の頃に実父と離れ、母が再婚した義父と暮らしてきた。裁判提起の会見には母親や姉が出席したが、その義父の姿はなかった。

「残りの12万円を学校に納める前日の朝、お母さんから事務所に、『帰りが遅いなど萌景の素行が悪く、私の言うことを聞かない。事務所の方から叱ってください』とお願いされたんです。だから、スタッフがお金を貸すのを一旦保留にし、“今日中に必ず社長に連絡をするように”と諭したのです。

 その夜、萌景さんから電話があると、『お母さんと話し合って、全日制の学校に行くのはやめました』と言う。驚きました。何度も『お金は用意しているよ。本当にそれでいいの?』と聞いたのですが、萌景さんは『もうお母さんと決めたので、すみません』と何度も謝っていました」(佐々木社長)

 実際、幸栄さんは過去のインタビューで、萌景さんに「明日、全日制高校は辞退しよう」と伝えたと語っている。なぜ母親は全日制に通うことに反対したのか。弁護団を通じて発表された幸栄さんの手記にはこう綴られている。

《私も主人も、当初から全日制の高校進学は反対でした。通信制の半期に8日しかない登校日ですら通えないのに、週5日登校する全日制なんて、到底無理だと思ったのです》

 それにも、佐々木社長は疑問が拭いきれないという。

「通信制だから週末に登校日があって、イベントがある週末とかち合ってしまう。他のメンバーは全日制に通い、問題なく学校とグループ活動を両立していた。なぜ萌景さんだけが“全日制が到底無理”なのでしょうか。あんなに学校で勉強することを楽しみにしていたのに…」

◆中学生になったばかりの頃かな

 生前の萌景さんは周囲に家庭でのトラブルを相談していた。萌景さんの知人が話す。

「亡くなる1年ほど前でした。萌景が、『お義父さんがこたつの中にカメラを入れて、私の下半身の写真を撮っていた。私はカメラを取り上げて、撮られた画像も確認した』と言うんです。その他にも、『お風呂に入っているとき、脱衣所に誰かが入ってくる』『部屋のドアの鍵が壊された』とも」

 その頃から、周囲に「家から出たい。ひとり暮らしをしたい」「家に帰りたくない」とこぼすことが多くなった。

「萌景さんはお母さんのことは大好きでした。でも、遅くまでゲームセンターに入り浸ったり、友人宅を泊まり歩いたり。深夜に“家に帰れない”と電話がかかってきて、車で家に送ったことが何度もありました。家の前に着いても、なかなか降りたがらず、車中でイベントのMCや自己紹介の練習をしたり、あれも聞いて、これも聞いて、とおしゃべりが止まらなかった」(佐々木社長)

 萌景さんの自宅前で、義父に話を聞いたが、「もうええ」「取材は受けん」「弁護士を通して」と繰り返した。母の幸栄さんが引き取って答える。

「わかってます、わかってます。何のことか」

──萌景さんが、お父さんに下半身の写真を撮られたと悩んでいた。
「うん、いろいろ言われていますよね。本当にいちばんの難しい年頃じゃないですか。それでお互いがぶつかることは、たびたびありましたよ。それは正直、誤解といえば、誤解なんですよね。はっきりとは聞いていないけど、そういうふうなのじゃない。ふだんから家の中を下着で歩く子でもあったんで。しかもそれはすごく前のことですよ。中学生になったばかりの頃かな」

──お母さんはずっと前から知っていた?
「そやけん、周りが思うような、そんな深いんじゃない。登校拒否してた中学時代、私が戸外に出したら、近所中に聞こえる声で『ママが虐待する』って叫ばれたことがある。そういう子なんです」

 遺族の代理人は「思春期やステップファミリーにありがちな関係性から生じる悩み以上のものはない。義父は『盗撮』はしていない。『盗撮』があったと指摘される事象は、萌景さんが中学1年生の時なので自殺とは無関係」と言う。

 萌景さんの気持ちを理解できる大人は誰もいなかった。

※女性セブン2018年11月8日号