阪神がドラフト1位戦略を大阪桐蔭の“三刀流”根尾昂と三拍子揃った大型外野手、藤原恭大の2者選択に絞ったことが22日、明らかになった。両者の評価は、甲乙つけがたいためにドラフト当日の朝まで他球団の情報を収集。競合チームが少なく、クジ確率の高い方を選択、矢野新監督に運命を託すというプランを固めた。最終結論はドラフト当日の25日に決定することになる。
 
 阪神の来季だけを考えれば、補強ポイントは即戦力投手だ。しかし、本社主導の辞任勧告により、来季の編成に意見してきた金本監督が辞任、矢野監督へ代わり、フロント主導で将来を見据えたドラフト戦略を貫くことになったため根尾、藤原の大阪桐蔭の2人の大型野手にターゲットを絞った。

 当初、阪神内では、藤原がナンバーワン評価だったが、春夏連覇した甲子園大会以降の追跡調査で、根尾の評価が急上昇。“ポスト鳥谷”のショート不在というチーム事情も手伝って1位指名の最有力候補にリストアップされた。金本前監督は、北條史也、植田海、糸原健斗らを起用してきたが、北條は伸び悩み、今季はようやく脱皮する気配を見せていたが肩を脱臼、糸原は二塁へコンバートされるなどレギュラー獲得に至る選手が出てきていない。センターラインを固めたい阪神にとって根尾は、喉から手が出るほど欲しい逸材だ。

 しかし、早々と中日が根尾の1位指名を公表。与田新監督は「スーパーマン」と表現、二刀流起用を検討する構想さえ披露した。高橋監督から原新監督にバトンタッチした巨人もラブコールを受けていた金足農の吉田輝星から根尾へと方向転換。楽天、横浜DeNA、大谷翔平で二刀流育成に成功している日ハム、ソフトバンクらも根尾を1位候補に挙げており、少なくとも5球団以上が競合する状況となり、クジを外すリスクが高まった。

 昨年の阪神は、清宮幸太郎を1位指名したが、クジで外し、外れ1位で入札した安田尚憲もロッテに取られ、仙台大の馬場皐輔を外れ外れ1位で指名したが、1年目は戦力とならなかった。1位相当の選手層が薄い年にクジを外した場合、外れに有力選手が残っておらずドラフト戦略全体に影響を及ぼす危険性がある。そこでリスクを回避するためのドラフト戦略的に根尾と変わらぬ評価のあった藤原が再浮上してきたのだ。

 藤原についても複数球団が熱視線を送っており、特にロッテは1位指名が有力視されている。
 だが、もしライバルがロッテだけなら2分の1の確率となり、根尾の5分の1の確率よりもリスクは少ない。加えて、福留孝介、糸井嘉男らのベテランに頼っている外野陣の現状からすると、10年以上ポジションを任すことのできる次世代の外野手育成は急務だ。

 新人王を獲得した高山俊が伸び悩み、昨年20本塁打を放った中谷将大も今季はわずか5本塁打に終わるなど、ポスト福留、ポスト糸井が出てきていないチーム状況だけに、なおさら高レベルで三拍子が揃い、長打力もあり、将来トリプルスリーさえ狙えるスケール感のある藤原は、なんとしてでも欲しい素材である。藤原は、足と肩が抜群のため、その守備力は即戦力との評価があり、ベンチからすれば、1年目から起用しやすい選手でもある。

 ただ、今後、根尾の競合を回避して阪神同様に藤原指名に回ってくる球団が増える可能性もなくはない。もし競合回避の連鎖が起きて、根尾のクジ確率が下がれば、阪神は、もちろん、根尾を1位指名することになる。そこは、直前まで各球団の情報戦。あえてダミー情報を発信する球団もあり、水面下での激しい駆け引きが続くことになる。

 昨年のドラフトでは、横浜DeNAが、その事前の情報戦をもとにドラフト戦略を固めて、結果的に、立命大の左腕、東克樹の1本釣りに成功、即戦力として11勝5敗の数字を出した。高田繁GMは、「即戦力の評価をしたのは田嶋(西武とオリックスが競合してオリックス1位)と東の2人だけだった。田嶋は2球団以上の競合が予想され、東も楽天が来るのではないか、という情報も入っていたが、1本釣りの可能性の高い東に絞った」という後日談を話していたが、こういう“情報戦”を勝ち抜くスカウト陣の能力と戦略、決断がドラフトでは非常に重要になってくる。

 阪神はドラフトの当日までにどれだけ高精度の情報を集めることができるのか。根尾か、藤原か。いずれにしろ阪神の未来のカギを握るドラフト1位指名候補は、25日の当日に最終決断が下されることになる。

 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)

10/23(火) 5:28配信 THE PAGE
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181023-00010000-wordleafs-base