警察に提出した診断書に書かれた全治日数は当初の見込み

1.警察に提出した診断書の「全治2週間」の意味

交通事故(人身事故)や傷害事件等に遭うと、医師に診断書を作ってもらいますが、
記載される「全治日数」の見込みは、あくまでも当初の見込みです。
例えば、交通事故や傷害事件等にに遭い、搬送先の病院で診察を受けたとします。
警察に出す診断書が書かれますが、そこには、例えば、「頭部、左肩打撲 全治に2週間を要する見込み」などと記載されたとします。
実際に、2週間で治るものなのでしょうか。
治る人もいるでしょうが、「全治2週間」の診断書で、数か月間通院治療する人も多いです。
相手方の損保も、通院期間をキッカリ2週間に制限するということはありません。

2.警察側の事情

こういった診断書の記述についてたいへん興味深い事情が、医師により紹介されています
(2017「当直でよく診る骨折・脱臼・捻挫」P257〜渡部 欣忍,日本医事新報社)。
病理学的には軟部組織損傷の修復には3か月かかるなどともいわれますが、警察は大まかなけがの程度を知りたがっており、
正確な医学的情報は求めていません。そのため、医師も、大まかな記載しかしないのだそうです。
同書では、治療期間が15日以上30日未満だと、免停30日の行政処分になる旨の指摘もありました。
そのため、ケガの程度がそれほど大きくない場合には、免停にならない範囲で、「全治2週間」と記載されることが多いのでしょう。
診断書の全治日数については、こういった事情がありますので、損害保険会社も、2週間を超えて治療してもなんら意義を唱えないのです。

3.警察に提出した診断書に一切拘束されない

診断書の「全治2週間」の記載には一切拘束されず、その後の民事上の損害賠償には影響しない
警察に提出した診断書の「全治2週間」の意味は、行政処分や刑事処分で大まかな目安をつけるために使われるのであって、
民事上の損害賠償の基準となる根拠として通院期間を決めるために使われるわけではないからです。
つまり警察へ提出した診断書が「全治2週間」とあっても、「治療期間が2週間以内に収まるようしないとだめなのか?」と
判断する必要性は全くありません。なので安心して、治療を受け完治もしくは症状固定による後遺症などを根拠に
損害額を算出すればこと足り、係争して示談が成立しない場合は民事訴訟等で法的な結論を導けば良いだけです。