貴乃花関は別格!西岩親方「本当の横綱相撲取っていた」 

平成10年秋場所でしたね。入幕して3場所目。
ああ、ついにここまで来たか、と思いました。
雲の上の存在でしたから。うれしさのあまり、
土俵に立って塩を取りに行く仕切りの間に泣きそうになりました。
当たった感触は岩のよう。負けはしましたが、
国技館を引き揚げるときに悔しさは一つもありませんでした。
この人を目指して相撲界に入りましたから。

結局、自分が一番力の出る20代の頃に計9度挑戦して
一度も勝つことはできませんでした。
曙、貴乃花、若乃花、武蔵丸、朝青龍、白鵬、日馬富士、鶴竜と、
いろいろな横綱と対戦しましたが、やはり貴乃花関は別格でした。
本当の横綱相撲を取っていましたから。
ご本人はどんな思いかわかりませんが、対戦した感覚としては
真っ向から受け止めて力を出させるだけ出させてくれるのです。
それから「もういいのか。お前の力はそんなものか」と、
最終的には横綱が勝ちに持っていきます。本当に強いな、という感じです。

 同じ二所ノ関一門でしたので、巡業先では同じバスで移動したり、
同じ旅館に泊まったりすることがよくありました。
いろいろな場面で横綱貴乃花という人をずっと見てきましたが、
土俵をおりても、バスの中でも、旅館に着いても
「横綱」という感じでした。なかなか人を近づかせないオーラを放っていました。
簡単には話しかけられない存在ですよ。