26日から始まる2020年五輪ボランティアの募集をめぐっては、国が大学などに対し、学生が参加しやすいよう授業や試験の日程について、柔軟な対応を求める通知を出したことが議論を招いている。参加を促すような内容に賛否が分かれ、専門家は「自発性の担保」を求める。すでに一部の大学では日程変更に“同調”する動きもある。

 通知はスポーツ庁と文部科学省が7月26日付で国公私立大と高等専門学校に出した。学生のボランティア参加の意義を説明し、現状のルール内で「届け出なしに授業開始日の繰り上げや祝日授業の実施の特例措置を講ずることなどが可能」と改めて伝えた内容だ。

 大会期間のみならず、業務内容によっては事前の研修が不可欠なものもあり、多くの大学で毎年8月まで授業や試験が行われている中、学生が参加しやすい環境を整える狙いがある。

 早々と日程変更を決定した大学も出ている。国士舘大(東京)は大会期間中を「特別課題研究期間」と位置づけて授業は行わないほか、期間外でも五輪関連のボランティア活動に参加する場合は公欠扱いに。担当者は「五輪では得難い体験ができる。希望者には、その機会を与えたい」。

 また、都心部にある明治大は、五輪開幕日に始まる予定だった定期試験を前倒しで行うことを決定。理由を「大会期間中は首都圏の交通機関に混乱が生じる可能性がある」と試験実施に支障を来す恐れがあることを強調した上で、「学生が大会に参画できる機会を奪ってしまう可能性がある」とも説明した。

 いずれも国の要請によるのではなく、独自の判断であることを強調。他に首都大学東京(同)も昨夏に日程変更を発表している。

 しかし、ボランティアに詳しい東京大大学院の仁平典宏(にへい・のりひろ)准教授(教育社会学)は「文科省は許認可権を背景に大学側に対して暗黙の力を持っており、『自主性に任せる』とは言っても影響力がある。『やらされる学生』が出ないように真の自発性を埋め込む(担保する)必要がある」と話す。

 一方、早稲田大の友添秀則(ともぞえ・ひでのり)教授(スポーツ教育学)は「学生に参加を強制するようなことがあってはならない。しかし、私が接する中では参加を希望する学生は多く、やりたい人がやりやすい環境をつくること自体は必要だ」と述べた。

9/24(月) 17:36配信
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