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「鎮魂」の8月、秀作だったドラマ『夕凪の街 桜の国 2018』(碓井広義)  8/26(日)

8月は、「鎮魂」の月
8月6日「広島原爆の日」、8月9日「長崎原爆の日」、そして8月15日「終戦の日」。73年が過ぎても、やはり8月は「鎮魂」の月です。

かつてのテレビ界は、NHKも民放もこぞって、この時季に「原爆」や「戦争」をテーマとした番組を放送したものです。
今年も各地のNHKがその力を発揮してくれました。

皆実が幸せを感じたり、美しいと思ったりするとき、彼女の中で原爆投下直後の地獄のような光景がよみがえってきます。
皆実の独白によれば、「お前の住む世界はここではないと、誰かが私を責め続けている」というのです。

自分が被爆したことを打越に打ち明けるとき、皆実は問いかけます。
「ずっと内緒にしてきた。忘れたことにしてきた。だけど、なかったことにはできんけえ。話してもいいですか」

そんな彼女に、打越は「生きとってくれて、ありがとうな」と答えます。いいシーンでした。

打越との明るい未来が少し見えてきたかと思った直後、皆実は原爆症で短い生涯を終えます。
「嬉しい?(原爆投下から)10年たったけど、原爆を落とした人は、『やったあ! また1人殺せた』って、ちゃんと思うてくれとる?」

死ぬ間際、最期に皆実が胸の内で語った言葉は、悔しさと、切なさと、厳しさに満ちたものでした。

「厳然たる事実」と「声なき声」を伝える意思

このドラマを見終って、あらためて痛感するのは、戦争や原爆はあまりにも多くの命を奪っただけでなく、辛うじて生き残った者たちをも、長い間、苦しめ続けたという事実です。

戦後73年という長い年月を経て、どこかぼんやりとしていた戦争の、そして原爆の輪郭が、私たちの目の前にはっきりと像を結んだ。そんな気がします。

その意味で、NHK広島放送局の制作陣の方々、そして明るさと陰りの両方を瑞々しい演技で表現した川栄李奈さんをはじめとするキャストの皆さんに、拍手を送ります。

https://news.yahoo.co.jp/byline/usuihiroyoshi/20180826-00094571/