2018年8月27日16時0分
https://www.hochi.co.jp/entertainment/column/20180827-OHT1T50069.html
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 脊髄損傷で車いす生活になったアイドルグループ「仮面女子」の猪狩ともか(26)=スチームガールズ=の復帰会見が26日に行われた。周囲の祝福の思いがあふれた現場で、一部記者のパラスポーツ(障がい者スポーツ)への意識に、内部障がい1種1級で、パラスポーツ指導員の資格を持っている私は大きな違和感を覚えた。

 今年4月、都内で倒れてきた看板の下敷きに。胸、腰などに大けがを負い、車いす生活になった猪狩の復帰会見は東京・秋葉原にある常設劇場「仮面女子CAFE」で行われた。

 約4か月ぶりに劇場に姿を現した猪狩は、自身の担当カラー・イエローの「スチガ衣装」を身にまとい登場。車いすに乗った姿で「ただいまー!」と、ひまわりのような笑顔であいさつした。会場には、その復帰を待ち望んでいたファンが大勢駆けつけ、祝福ムード一色。障がい者となったアイドルを取材するため、多数のマスコミも殺到した。

 会見の中で、「パラスポーツに挑戦する」と猪狩は宣言。“不勉強な”1人の記者が猪狩に向け、「パラスポーツには競技によっては、えらくレベルの低い競技がいっぱいありますから(あなたも代表になれるかも)」と発言したのだ。

 「そんな言い方…」と困惑した表情を浮かべた猪狩。周りの取材陣からは、その記者の発言に同調したかのような笑いが起こった。発言した記者は「変な意味じゃなくて、競技人口が少ないとかね」とフォローを入れていたが、私は、はっきり怒りを覚えた。同時に「パラスポーツは、まだその程度だと思われているのか」とがっかりした。

 パラスポーツという言葉は「もう一つのスポーツ」という意味を持つ。決して、健常者のスポーツより劣っているという訳ではなく、身体や精神などに困難を抱えているアスリートが「もう一つの世界」で自身の限界に挑戦していることに価値があるのだ。

 障がいを持つ私自身、高い誇りとともにパラスポーツに挑戦し、指導もしている。

 それだけに、この日の「えらくレベルの低い競技がある」という発言には心底がっかりした。2020年東京パラリンピックには全世界から健常者、障がい者の区別などなく、スポーツが大好きな人々が日本を訪れる。パラスポーツへの認識不足で恥をかかないように、我々マスコミも意識を変えていかなければならない。残された時間は少ないから…。(記者コラム・松岡 岳大)