世界からアジアに勝負の場を移しても、桃田の意欲は変わらない。「世界チャンピオンとして簡単に負けられない」と自らプレッシャーをかけ、心を燃やす。
バドミントンはどの種目もアジア勢が世界ランク上位を占め、アジア大会は2年後に迫った五輪の指標となる。日本は女子が過去シングルス、ダブルス、団体で優勝実績はあるが、男子はなし。桃田には個人、団体初の金メダルが期待される。組み合わせに恵まれた世界選手権よりアジア大会の方が厳しい戦いになる可能性がある。
世界選手権では、今の桃田の強さが如実に表れた。まずは身体面。極力スマッシュを打たない、異例の戦い方で世界一になった。腹筋に痛みを抱えていたため、守りを固め相手の体力を奪う作戦を取った。「準決勝、決勝では相手のショットを拾い、長いラリーに持ち込み、スタミナ的に自分のほうが勝った感じがした。相手にプレッシャーをかけられたので、それが自信になりました」。
大舞台で発揮したスタミナは、この2年の成果だった。違法賭博問題が発覚し、練習を再開したのは16年5月。それ以来、ランニングを欠かさない。日本ではほぼ毎日朝と昼。海外遠征中でも負けるとマシンで1時間ほど走っている。「なぜ走るのか?」の問いには「置いていかれる気がするから」と言う。「(昨年世界王者の)アクセルセン(デンマーク)だったり、同世代の人が活躍しているので、やっていないと落ち着かない」。もともと持つ高い技術に、フィジカルを備えて戻ってきた桃田は既に最強の位置にいる。それでも「自分は挑戦者の気持ちでもっとレベルアップしていきたい。自分は進化の最中」と満足はない。
心の強さも勝因の1つだった。実際、世界選手権の試合中に何度も「心が折れそうになった」と明かした。以前は1度だめだと思ったらその1点を捨てることもあった。だが、今回はきつくても足を動かすことをやめなかった。桃田は「簡単に負けるわけにはいかない。下手な試合はできないという強い気持ちがある。全然違う」と話す。
試合に出られない間、チームメートの練習相手を務め、シャトル拾いを率先するなど、それまでのエリート人生で無縁だったサポート役を経験し、競技ができるありがたみをあらためて学んだ。「下手な試合はできない」という必死のプレーの根底には支えてくれる人への感謝の思いがある。
実戦復帰した昨年は、見られることを意識し、萎縮していたこともあった。今年1月、日本代表に復帰したことで肩の力は抜けた。「代表に選んでもらったことで『やるしかない』という環境になった。今はコートの中でしっかり自分らしさを出せている」。心身の成長が桃田の強さを支えている。
16年リオ五輪に出られなかった分、東京五輪への思いは強い。「期待し、応援してくれていた人を裏切ってしまって、申し訳なく思っている。自分が五輪で優勝したいというより、期待に応えたい気持ちがある。その方法が勝つこと。出るからには金メダルを目指したい」。
アジア大会でも頂点を目指す気持ちに変わりはない。「守備は通用すると感じられたので、あとは自分の決め球の精度をあげられるか。団体戦でも攻撃面をスキルアップして、チームを引っ張っていけるように」と攻めて、2冠を狙う。
(以下略、続きはソースでご確認下さい)
2018年8月16日10時10分
https://www.nikkansports.com/olympic/column/edition/news/201808160000297.html