毎日、読売、東京新聞はどう報じたか?

 一般紙(東京版 7月31日)でもこの話題は大きく扱われた。毎日新聞は「ライバルも認めた直球 日大鶴ケ丘・勝又温史投手(3年)」と敗者にスポットを当てた記事の中で、

《幕切れはあっけなかった。マウンドにしゃがみ込み、打球が吸い込まれた左翼席を見つめた。閉会式を終えた後、救急車で病院に運ばれた。脱水症状を伴う熱中症だった。》

 読売新聞も「真っ向勝負 154球の熱投 日大鶴ケ丘 勝又温史投手」で、「試合後は両足がつり、病院に運ばれた」「試合後 熱中症で搬送」と報道。

 東京新聞は「勝又投手、救急搬送」。

《西東京大会の本部は30日、同日に神宮球場で行われた日大三―日大鶴ケ丘の決勝戦後に、日大鶴ケ丘の勝又温史投手が体調不良を訴えて救急搬送されたと発表した。》

 各紙、エースの熱中症にふれている。

朝日新聞をいくらめくっても見つからない記事

 では夏の高校野球主催の朝日新聞ではどれだけ大きく扱われているのか。

 東京版は「日大三サヨナラアーチ V」と「日大鶴ケ丘 夢へあと一歩」。でかでかと2ページを使ってこの決勝を報じている。

 敗者・勝又投手を大きく扱った「『打倒 日大三』渾身の投球」というコラムもあった。

《小学生だった2011年、西東京大会で日大三と日大鶴ケ丘の準決勝を観戦。その時に負けた日大鶴ケ丘で日大三を倒したいと進学した。》

 さすが朝日、入念な取材力である。高校野球のドラマを感じさせる。試合後、勝又は日大三の選手に声をかけられたと書く。

《「ナイスピッチ」。これに対し勝又は返した。「ありがとう」。そして「頼むぞ」。》

 もう、高校野球ファンなら涙、涙のエピソードである。感動をありがとう! しかし……。

 記事はこれで終わっているのだ。「勝又投手、熱中症」のことは書かれていないのである。

 いや、それだけじゃない。2ページにわたって大々的に報じられたこの決勝戦の朝日の紙面をすべて探しても「勝又投手、熱中症」や「救急搬送」は一切書かれていないのである。

 これにはびっくりした。何度も何度もこの日の朝日新聞を隅から隅までチェックしたがやはり一言も触れていない。

つづく