これで何が金メダルなのか。ふざけるなと言いたいですね」

先日、正式に決定した20年東京五輪の野球、ソフトボールの大会方式について、スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏は怒りを込めてこう言った。

この方式は3カ国ずつ2組が1次リーグで総当たり戦を行った後に、10試合の変則的な決勝トーナメントを行うというものだが、問題は金メダルまでの道のりだ。1次から5戦全勝すれば金メダルとなる一方で、1次で2戦全敗して3位に終わってもなお、金の可能性は残る。敗者復活戦が多く組まれたことで、最高7試合で4勝3敗でも金メダルが取れるのだ。

 過去の五輪は地区予選を勝ち抜いた8カ国が出場。総当たりの予選を行い、上位4カ国が決勝トーナメントに進出していた。事実上、1次リーグの勝敗が度外視される大会の金メダルにどれほどの価値があるというのか。

 この日、日本戦初戦が行われる福島を視察した稲葉代表監督は「米国で頑張っている選手が来てくれたら」と話していたが、そもそも6カ国しか出場せず、MLBが見向きもしない五輪でメジャーリーガーの参加は絶望的。さらにこの大会方式が競技の値打ちをいよいよ下げていると言わざるを得ない。

 そんな野球のために日本野球界は目の色を変えて動いている。五輪期間中のプロ野球のシーズン中断だけでなく、夏の甲子園大会も社会人の都市対抗も、開幕時期の変更を検討している。

 開催地の横浜スタジアムを本拠地とするDeNAはもちろん、新国立に隣接し、資材置き場などで使用されるヤクルトの本拠地・神宮球場の借用期間はこの日、7月6日から9月13日の70日間にも及ぶことが明らかに。ヤクルトは東京ドームなどで試合を開催するべく調整を強いられている。

■プロもアマも対応苦慮

 日本ハムはもっと大変だ。本拠地の札幌ドームはサッカー会場として使用され、大会組織委から3カ月間もの借用を要請された。竹田球団社長は「3週間程度に抑えてもらいたい」とコメントしたが、東京ドームを本拠地とする巨人、甲子園を本拠地とする阪神なども影響は避けられない。

 日本野球界は総力をあげ、野球開催を支えようとしている。それなのに、こんな大会方式を導入する大会組織委はいったいどういう見識なのか。

 導入経緯を見ると、非常に消極的な決着だったのは明らかだ。WBSC(世界野球ソフトボール連盟)は当初、6カ国総当たりの全19試合を提案したが、大会組織委は経費増大や消化試合の発生を懸念し、全10試合での開催を主張していたという。

■組織委の軽視

 谷口源太郎氏は言う。

「全16試合開催となったものの、このムチャクチャな方式ですからね。IOCや組織委が野球を軽視していることがよく分かる。そもそも野球復活は大リーグの参加が前提にあり、これが実現しなかったにもかかわらず、公開競技として採用したところから根本的な問題があった。そのなれの果てといっていい」

 谷口氏は、野球とソフトが福島で開幕戦を行うことにも疑義を呈する。

「『復興五輪』などとんでもない。先日、福島を訪問しましたが、地元住民はいまだ自分たちの復興すらままならない。原発事故はまだ継続しており、野球、ソフトの開催に興味を持っている人は少ない。なのに13億円もの金をかけて球場を改修する。
今、原発事故対応の拠点だった『Jヴィレッジ』でサッカー場建設が進められている。福島第1原発から約20キロの場所でスポーツができるはずがないにもかかわらずです。要するに、復興という名のもとに野球、ソフトが“箱モノ行政”に利用されている。野球、ソフトはおとしめられているといっても過言ではありません」
ここまでくると、五輪で野球をやること自体、バカバカしくもなってくる。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180726-00000015-nkgendai-base