【No Ball,No Life】ロシアW杯後のJリーグが盛り上がりそうだ。神戸にイニエスタ、鳥栖にフェルナンド・トーレスである。来日2年目となる神戸のポドルスキも含めて国際経験が豊富な3人のプレーが見られるのは、なんともぜいたくだ。

 過日、イニエスタの来日を知らされた鹿島の昌子は「本当に来るんですか? うちと対戦するのは9月だから…」とピッチで相まみえるのを楽しみにしていた。昌子はクラブW杯ですでに対戦済みだが、そのときにやはりピッチで“違い”を感じたようで、それもあって、もう一度対戦できる喜びにあふれていた。

 おそらく、多くのJリーガーが同じように対戦するのを楽しみにしていると思うし、実際に同じピッチに立つことでいろいろなことを感じ取れるのは間違いない。ポドルスキのキープ力、展開力、シュート力はやはり目を見張るものがある。

 イニエスタ、フェルナンド・トーレスも必ずや「オォッ」と思わず感嘆するプレーをみせてくれるはずだ。

 そして、なにかを感じた日本選手にはこの3人が長く戦ってきた“本場”をぜひ目指してほしい。Jリーグで試合に出場することに満足せず、サッカー界の潮流、欧州各国のリーグでプレーすることを目指してほしい。それが、日本サッカー界のレベルアップ、日本代表の強化につながるからだ。

 「欧州の5大リーグ(イングランド、イタリア、ドイツ、スペイン、フランス)でレギュラーを務める選手が20人以上になったときに、W杯のベスト4や優勝が見えてくる」

 これは、数年前に当時日本サッカー協会の会長だった川淵三郎氏(現日本サッカー協会相談役)を取材したときに聞かれた言葉である。夢見物語な数字だったが、1部とか2部とかレギュラーを務めるとかを無視すれば、確実に海外でプレーする選手は増え、ロシアW杯では登録23人中15人が海外クラブ所属であり、5大リーグでは13人がプレーしている(登録時のデータ)。

 4年前のブラジルW杯では11人だったので、この数字に関しては確実に成長している。これがそのまま成績につながるわけではないが、ひとつの目安にはなる。

 ロシアW杯のベスト4に残ったチームをみると、やはり5大リーグでプレーしている選手が多い。具体的にはフランスとイングランドが23人全員、ベルギーが19人、クロアチアが16人となっている。4カ国を合わせて、5大リーグ以外でプレーしているのはわずか11人というのが現実である。

 さらには、その11人中9人は欧州でプレーしていて、異なる大陸となるとベルギーのヴィツェル(天津)、カラスコ(大連)の中国組2人しかいない。

 欧州、もっと絞って5大リーグがサッカーの潮流であることは否定できず、選手である以上、あえてここを目指さない手はない。世界中から“猛者”が集う戦いの場でレギュラーを務める選手が20人以上になれば…という目標設定はある意味でわかりやすいといえる。

 「対戦する相手をボクはけっこう高いところに置いて試合に入る。そうすれば、実際にやったときに『こんなものか』となる。ルカクはかなり高いところに置いていたけど、同等かそれ以上だった」(ベルギー戦後の昌子)

 普段から対戦していれば、こうした感覚にならなくて済む。あるいは、ロシアW杯での活躍によって昌子にはすでに欧州のクラブから獲得のオファーがきているかもしれない。今夏に移籍となればイニエスタやフェルナンド・トーレスとJリーグで対戦することはなくなるが、それ以上の経験ができる。

 ロシアW杯では対象をベスト8に広げてみても、ウルグアイ(11人)、スウェーデン(14人)、ブラジル(17人)は2桁の選手が5大リーグでプレーしている。ロシアはチェリシェフだけがスペインでプレーしているが、ロシアリーグ21人、ベルギーリーグ1人で全員が欧州でプレーしている。

 ウルグアイは5大リーグでプレーする選手が日本よりも少ないが、ほとんどがそれぞれの国の上位クラブでレギュラーとして活躍している。

 すなわち、5大リーグでチャンピオンズリーグに出場するようなクラブに所属し、レギュラーとして活躍する選手が2桁程度になったときに、未知の世界であるW杯ベスト8、さらにその先への扉がようやく開かれるのかもしれない。(飯塚健司、フリーランスライター)

https://www.sanspo.com/soccer/news/20180712/jpn18071215260004-n1.html