【大下剛史・熱血球論】本紙専属評論家の大下剛史氏が、広島の独走をやすやすと許しているセ・リーグ他球団に苦言を呈した。「このままでは
プロ野球の衰退につながりかねない」とまで危惧しているのだが、一体どういうことなのか。ペナントレースの後半戦は球宴明けの16日から
再開されるが…。ここまで言われた広島以外の5球団は黙っていられるのか。

 プロ野球は11日で前半戦を終えた。パ・リーグが首位西武から5位ロッテまで6・5ゲーム差の混戦なのに対し、セはリーグ3連覇を目指す
トップのカープ以外の5球団が借金生活だ。OBとしてだけでなく、また西日本豪雨で甚大な被害を受けた広島で暮らす者としてカープが好調なのは
喜ぶべきことだが、一方で「この現状を看過していてはプロ野球の衰退につながりかねない」と心配もしている。

 正直言って今年のカープは強くない。特に救援陣は勤続疲労もあってか安定感を欠いている。それでも貯金11で2位巨人に6ゲーム差の首位に
いるのは、他の5球団が弱すぎるからだ。2年連続で同じチームに優勝されているのに、今年も同じ過ちを犯している。現場のみならず各球団のフロントも
含めて「いったい何をしていたのか!」と声を大にして言いたい。

 いくらカープが人気球団になったといっても経済的には「昔より良くなった」というだけで、5月にプロ野球選手会が発表した支配下選手の
年俸調査結果によれば、カープは12球団中6位。合計20億9348万円はソフトバンク(47億7392万円)に遠く及ばず、巨人の半分程度。
11位のロッテと約2億円の差しかない。それでもカープが上位にいられるのは一、二軍だけでなくドミニカ共和国のアカデミーを含めた地道な
選手育成を積み重ねてきたから。「そんなことは分かりきっている」との声も聞こえてきそうだが、実はこれが分かっていないプロ野球関係者は多い。
だからこそ3年も“カープ1強”が続いているのだ。

 今春のキャンプ取材でDeNAを取り上げた際に、通常なら「ランチタイム特打」などを行う時間帯に約40分にわたってチーム全体で休憩し、
グラウンドをがら空きにするスタイルに疑問を呈した。これで勝てるなら自分の野球観を見直し「練習はウソをつかない」との考えを改めるつもりで
いたが、投打の主力に故障や不調が頻発している現状を見れば、カープとの差はそのまま練習量の差だと言うしかない。

 そのカープもブラウン監督時代に緩んだチームを立て直すのに7年を要した。金をかけて選手をかき集めても、強さが長続きしないことは過去の歴史が
証明している。ファンが求めているのは鍛え抜かれた選手による高いレベルでの真剣勝負。最近ではカープファンでさえ「弱い相手に勝ったところで…」と
満足していない。伝統ある巨人、阪神もしかり。カープの後塵を拝しているセ5球団の関係者には、いま一度、なぜ弱いのかを真剣に考えてもらいたい。
(本紙専属評論家)

東スポWEB
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