【サッカー】<GK川島永嗣は本当に「いらない」のか?>過剰な批判への疑問、今こそ深めるべきGKへの理解 ★2
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ロシアワールドカップでベスト16に進出した西野ジャパン。なぜこれまで低調だった日本代表は結果を残すことができたのか。そしてベスト8進出には何が足りなかったのか。短期集中連載でお届けする。(文:舩木渉)
●川島への過剰なまでの批判は正しかったのか
GKとは孤独なポジションである。
ピッチ上で唯一、手でボールを扱うことを許されていながら、そこには大きなリスクも一緒に抱えている。良いセーブを見せてもゴールにかき消されて終わりがち。失点すれば必ず責任を問われる。ストライカーは何度ミスをしてもゴールさえ決めれば許されるが、GKの1回のミスは失点に直結する。この難しさは味方にすらなかなか理解してもらえない。
ロシアワールドカップ期間中、様々な場面で「川島がまたやらかした」「川島なんてもういらない」「川島が戦犯」「川島がいなければ勝てた」など、日本代表の正GK川島永嗣に対する過剰なまでのバッシングを目にした。
川島は何度も日本のピンチを救っている。彼がいなければ失点はもっと増えていたはずだ。なぜあのような批判を受けなければいけないのか、常々疑問を感じていた。根拠なき批判はただの暴言に過ぎない。批判ばかりで根拠のある対案がなければ前進はない。
確かにGKへの評価は難しい。ピッチに立つ22人のうち20人にとって、GKの視界に何が見えているか、頭の中で何を考えているのかを想像するのは困難を極めるはずだ。それゆえにGKへの正しい理解や評価が広まりづらいとも言える。
だが、日本サッカー界が「ベスト16」という壁を越え、「ベスト8」より先の世界に到達するためには、GKへの理解を深め、正しく評価できる土壌を作っていかなければならない。今大会の川島のパフォーマンスを冷静かつ客観的に分析し、これからの日本サッカーに役立てていかなければならない。
川島へのバッシングがこれまで以上に強くなったのは、グループリーグ初戦のコロンビア戦の失点からだったように思う。フアン・フェルナンド・キンテーロに壁の下を通された直接フリーキックが、議論を呼んだ。
「川島は後ろ方向に飛んでいるのだからゴールの前で止められるわけがない」
「ボールに全く反応できていないじゃないか」
このような反応を多く耳にした。だが、これらは全くの間違いだと断言しておきたい。失点シーンではまず、GKにボールが到達する前の守備におけるアクションでミスやアクシデントが起こっていなかったかを冷静に検証すべきだろう。
あの場面で川島はボールの前に長谷部誠、大迫勇也、吉田麻也、昌子源という日本代表の中では背の高い4人を壁に立たせてニアサイドのコースを消した。そして自分はファーサイドのコースをケアしやすい位置に立った。
ところがキンテーロがボールを蹴った瞬間、壁の4人が思い切りジャンプした。ミーティングではフリーキックに対して「ボールの質を見る。できるだけつま先立ちで、ぎりぎりまで高く跳ばなくていい」という共通認識があったと昌子は明かしていたが、全員高く跳んでいた。
つづく
7/12(木) 11:01配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180712-00010001-footballc-socc
2018/07/12(木) 12:26:21.50
http://hayabusa9.5ch.net/test/read.cgi/mnewsplus/1531365981/ ●セネガル戦の1失点目はミスだったが…
壁が跳ばないという認識があった川島は、4人の足もとを抜けるコースへの優先順位を下げていたはずだ。実際に反応は一瞬遅れ、ボールが壁の下を通過してからセーブにいった。あのコースを狙ったキンテーロの駆け引きも素晴らしかったが、何よりも壁の4人の判断ミスを指摘すべきではなかっただろうか。
4人の壁の右にコロンビアと日本の選手が1人ずつ立っている状況で、おそらく川島からキンテーロが蹴るボールの位置はほとんど見えていない。これは配置上仕方のないことで、壁の上または横から抜けてくるボールであれば軌道を見て反応できるが、ボールがぎりぎりまで見えないゴールまでの最短コースを抜かれてしまえば反応して前で止めろという方が酷だろう。ワールドクラスのGKでもあのコースであれば一歩も動けなかった可能性すらある。
もちろん川島にもミスはあった。それはグループリーグ2戦目の1失点目である。これは彼自身も試合後に過ちを認めている。サディオ・マネが詰めてきていたのを視界の端に捉えて様々な可能性がよぎったのかもしれないが、ゴール前が混戦になっている状況で拳を作って前方向にパンチングで逃げようとするのはリスクが高すぎる。キャッチングも同様だ。
直前に日本の左サイドから右サイドへと大きく振られた際、原口元気の中途半端なクリアミスもあったが、シュートに対する川島のパンチングでの対応はミスを言わざるをえない。一瞬のファンブルが事故を起こしかねないあの場面では手のひらで弾いてコーナーキックに逃げるべきだった。
ここまでに挙げた2つのゴールは、日本にとってロシアワールドカップでの最初の失点と2つ目の失点だった。では、この後の失点場面で川島のミスが問われるような場面はあっただろうか。GKや守備のプレー原則を理解していれば、明確なミスはほとんどなかっただろう。
セネガル戦の2失点目。日本の右サイドを破られてグラウンダーのクロスを入れられて逆サイドに走り込んだサイドバックの選手にゴールを奪われた。ここで責任の一端を問われるべきは、GKと最終ラインの間にボールを通させてしまったDF陣だ。
原則として守備時は「ボールとゴールの間にポジション」を取り「ボールとマークする相手の両方を視野に収め」なければいけないにもかかわらず、最も危険なGKとDFの間に決定的なパスを通させてしまった。その時点で守備対応が後手を踏むことになり、クロスの出し手から遠いサイドの相手選手のケアも追いつかなくなってしまう。
ポーランド戦の失点も川島以上にディフェンスの責任が大きい。日本の右サイドからのフリーキックに対し、ポーランドはペナルティエリア内に4人、後方から走りこむ選手が1人という配置だった。日本は最も警戒しなければならないロベルト・レバンドフスキにセンターバックの吉田と槙野智章の2人をつけ、数的優位で守っていた。
ゴールを決めたヤン・ベドナレクには、酒井高徳と大迫勇也がはさみ込む形でマークについていたが、彼らは抑え込まれ2人の間をいとも簡単に抜かれてしまった。そしてGK川島が飛び出しにくい位置に正確なボールを供給したラファル・クルザワのキック精度も素晴らしかった。
つづく ●ベルギー戦の3失点で何が起こっていたのか
川島はベルギー戦でも戦犯の1人に挙げられていた。ヤン・フェルトンゲンに決められた1失点目の場面、ベルギーはコーナーキックでボールの近くに2人、ペナルティエリア内に7人を送り込んで、明らかに日本を混乱に陥れようとしていた。2点ビハインドの状況で、あのセットプレーがかなり重要になると踏んで勝負をかけてきただろう。
ペナルティエリア内にいる7人が一斉にゴールになだれ込んでくる状況も想定される中、実際にはゴールに向かって3人動き出し、3人は間隔を空けてあまり動かず、1人はペナルティエリア外に引いた。おそらく動きが少なく相手マークが手薄になるであろう3人の誰かに折り返させ、ゴール前の3人の誰かが詰める形をイメージしていたものと思われる。
ここではナセル・シャドリが最初にボールを頭で突いて、高くあげた。川島はロメル・ルカクへのマークが一瞬外れたのを見逃さずに前へ出てパンチングした。身長191cmで体重94kgの体格を誇るストライカーの頭上から先にボールに触った判断は賢明だった。
人の少ない方向に弾くことはできたが、味方もクリアミスをしてしまう。それによってボールは逆サイドに渡るが、ここでもニアサイドへのシュートを警戒してポジションをとった川島の判断は定石どおりのもの。フェルトンゲンのヘディングシュート(折り返しのパスだった可能性が高い)は予測できないコースに飛び、GKが処理するのは難しかった。
2失点目は多くの議論が交わされているが、マルアン・フェライニがヘディングシュートを放つ前のラインコントロールミスと、相手のマーカー撹乱の動きが見事で、単純な高さ勝負での失点ではなかった。
フェライニは昌子が最終ラインを上げようとする寸前に、隣の吉田の背後に一度隠れている。吉田はルカクとフェライニの2人を背負う格好となり、昌子がマークしていたはずの選手はいなくなった。そして昌子が一歩前に出て最終ラインが崩れた瞬間にフェライニが吉田の背後からスペースに飛び出して、ヘディングシュートを放った。日本はゴール前の駆け引きで負けていて、あれだけ近い距離から強いシュートが飛べばGKも反応するのは至難の業だ。
3失点目もカウンターの場面で山口蛍が下がりながら守らなければならなかっただろう。守備の原則からすれば、数的不利でカウンターを受けている場合は限界まで相手の侵攻を遅らせてサイドに誘導していかなければならない。にもかかわらず山口は前進するケビン・デ・ブライネに対して止まってしまった。相手から見ればアタックをかけられているのと同じになってしまう。そしてあれだけ綺麗に崩されてしまうと、GKだけで止めるのは難しい。ベルギーの完璧なカウンターだった。
川島がロシアワールドカップで喫した失点は以上の7つである。これ以外は全て止めた。セネガル戦やポーランド戦、ベルギー戦のいずれもで際どい1対1や、至近距離からのヘディングシュート、強烈なミドルシュートなどを阻止している。
特にポーランド戦の前半、カミル・グロシツキのヘディングシュートに対するセーブは紛れもなくスーパーだった。クロスを上げたバルトシュ・ベレシュインスキにとってシュートやスルーパスの選択肢もあった中で、最も危険なニアサイドのシュートコースを消しつつ、素早くダイレクトクロスに対応し、グロシツキのフィニッシュに備えて弾き出した。「普通のセーブをスーパーセーブに見せている」ようなことは一切なく、細かいステップやポジショニングの判断、弾き出す場所まで、一連のプレーは完璧という他ない。
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