●セネガル戦の1失点目はミスだったが…

 壁が跳ばないという認識があった川島は、4人の足もとを抜けるコースへの優先順位を下げていたはずだ。実際に反応は一瞬遅れ、ボールが壁の下を通過してからセーブにいった。あのコースを狙ったキンテーロの駆け引きも素晴らしかったが、何よりも壁の4人の判断ミスを指摘すべきではなかっただろうか。

 4人の壁の右にコロンビアと日本の選手が1人ずつ立っている状況で、おそらく川島からキンテーロが蹴るボールの位置はほとんど見えていない。これは配置上仕方のないことで、壁の上または横から抜けてくるボールであれば軌道を見て反応できるが、ボールがぎりぎりまで見えないゴールまでの最短コースを抜かれてしまえば反応して前で止めろという方が酷だろう。ワールドクラスのGKでもあのコースであれば一歩も動けなかった可能性すらある。

 もちろん川島にもミスはあった。それはグループリーグ2戦目の1失点目である。これは彼自身も試合後に過ちを認めている。サディオ・マネが詰めてきていたのを視界の端に捉えて様々な可能性がよぎったのかもしれないが、ゴール前が混戦になっている状況で拳を作って前方向にパンチングで逃げようとするのはリスクが高すぎる。キャッチングも同様だ。

 直前に日本の左サイドから右サイドへと大きく振られた際、原口元気の中途半端なクリアミスもあったが、シュートに対する川島のパンチングでの対応はミスを言わざるをえない。一瞬のファンブルが事故を起こしかねないあの場面では手のひらで弾いてコーナーキックに逃げるべきだった。

 ここまでに挙げた2つのゴールは、日本にとってロシアワールドカップでの最初の失点と2つ目の失点だった。では、この後の失点場面で川島のミスが問われるような場面はあっただろうか。GKや守備のプレー原則を理解していれば、明確なミスはほとんどなかっただろう。

 セネガル戦の2失点目。日本の右サイドを破られてグラウンダーのクロスを入れられて逆サイドに走り込んだサイドバックの選手にゴールを奪われた。ここで責任の一端を問われるべきは、GKと最終ラインの間にボールを通させてしまったDF陣だ。

 原則として守備時は「ボールとゴールの間にポジション」を取り「ボールとマークする相手の両方を視野に収め」なければいけないにもかかわらず、最も危険なGKとDFの間に決定的なパスを通させてしまった。その時点で守備対応が後手を踏むことになり、クロスの出し手から遠いサイドの相手選手のケアも追いつかなくなってしまう。

 ポーランド戦の失点も川島以上にディフェンスの責任が大きい。日本の右サイドからのフリーキックに対し、ポーランドはペナルティエリア内に4人、後方から走りこむ選手が1人という配置だった。日本は最も警戒しなければならないロベルト・レバンドフスキにセンターバックの吉田と槙野智章の2人をつけ、数的優位で守っていた。

 ゴールを決めたヤン・ベドナレクには、酒井高徳と大迫勇也がはさみ込む形でマークについていたが、彼らは抑え込まれ2人の間をいとも簡単に抜かれてしまった。そしてGK川島が飛び出しにくい位置に正確なボールを供給したラファル・クルザワのキック精度も素晴らしかった。

つづく