2018年7月10日21時24分
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栗原類さん(右)と母の泉さん。中学校の入学式で(C)ブレない子育て/KADOKAWA

 発達障害を公表しているモデル・俳優の栗原類さん(23)の母、泉さん(48)が子育ての経験をつづった手記「ブレない子育て」(KADOKAWA)を出版しました。類さんと向き合った日々や、親としての心構えを記しています。泉さんは「接し方の一つのヒントになれば」と語ります。

 泉さんはシングルマザーとして通訳などの仕事をしながら、類さんを育ててきた。類さんが発達障害と診断されたのは8歳のとき。当時住んでいた米国の小学校で可能性を指摘され、市の教育委員会のテストを受けて分かった。

 泉さん自身も、その際に発達障害と指摘された。自覚はなかったが、振り返ると、忘れ物が多かったり、集団行動が苦手だったりした。ただ、社会経験を重ね、日常生活で困ることはなかったという。

 一方、発達障害は人によって症状や程度が異なる。「私は落ち着きがないタイプだが、類はじっとしているタイプ。症状の違いを理解することから始めました」

 泉さんと違って、類さんには「記憶力の弱さ」があった。数分前に聞いたことも忘れてしまう。社会常識をいくら教わっても覚えられない。小学校高学年で日本に帰国してからも、暗記中心の勉強に戸惑うことが多かった。

 周囲から「類くんだけ出来ない」と他の子と比較されることも少なくなかった。泉さんは「子育ては他の人からどう評価されるか気にしていると成立しないことが多い。子供にとって何がプラスになるかを最優先に考えてきました」と話す。

 勉強もしてほしいと思っていたが、塾通いなど「みんなもやっているから」と周囲に流されず、類さんのキャリアを考えてモデルの仕事を優先。また、見聞を広めてあげたいと、20カ国以上を一緒に旅行した。見たことのない場所に行き、感動を共有することが親子の信頼関係を築くことにもなると考えたからだ。

 類さんがゲームやインターネットの動画投稿に没頭した時も禁止にはしなかった。勉強が手つかずになる心配もあったが、あらゆる国や世代の人と交流でき、プラスになると考えた。「禁止すれば心に残る体験もつぶすことになる。一緒に勉強し、危ないことがないように見守るのが親の務めだと思います」

 類さんと今も一緒に暮らし、身の回りのことをサポートする。泉さんは「自立できるまでには到達していないが、類も自分の特性にどう対応するかコツをつかみ、成長している実感はある。一人暮らしをしたいと言っているので応援していきたい」。(毛利光輝)