「このW杯で最高のサプライスは、まぎれもなく日本だ!」

 メキシコ・アステカTVの名物アナウンサーは、日本対ベルギー戦の中継でそう興奮気味に叫んでいた。

「実をいうと大会前は、そのポジションはアイスランドのものだと思っていたんだ。人口30万人ちょっとの国がW杯に出場するなんて、まさにシンデレラストーリーだからね。きっと何か奇跡を起こしてくれると思っていた。しかしふたを開けてみると、アイスランドは期待したほど魅力的なサッカーを見せてくれなかった。その代わりに、世界を楽しませてくれたのが日本だ」

 アナウンサーはそう続けた。

 相手は10人であったとはいえ、初戦のコロンビアに勝利し、グループリーグを突破。なにより後にブラジルの夢も打ち砕いた黄金世代のベルギーを、一度は2点までリードした日本。その戦いぶりは世界中にポジティブなインパクトを与えた。その証拠に、これまでのW杯とは比べようもないほど、多くの人々やメディアが日本についてコメントしている。誰もが日本を語らずにはいられなかったのだ。

 それは日本と対戦し、そのプレーを肌で知った選手も同じだ。

 セネガルのエース、サディオ・マネはロシアから帰国してバカンスを過ごしているなか、地元新聞にこう語った。

「大会前、我々は日本ぐらいには勝てるだろうと話していた。しかし現実には、我々は国に帰り、日本はロシアに残った。我々がグループリーグ敗退にふさわしいチームとは思わないが、日本は勝ち進むにふさわしいチームではあった」

 ポーランドのストライカー、ロベルト・レバンドフスキもまた、地元メディアで日本戦をこう振り返っている。

「日本に勝つのはとてもハードだった。日本のGKはいろいろ言われているが、あの試合ではスターだった。彼が防いだシュートは誰もが止められるものではなかったよ」

 レバンドフスキは、日本の最大の武器は”個”ではなく「組織力のすごさだ」とも言っている。

「前半が終わったとき、日本が『一定の選手だけをマークしておけば大丈夫』というチームではないことがわかった。日本にエースの選手はいないが、同時にチーム全員がエースでもあった。だから、彼らを止めるのは本当に大変だった。

 大会前の作戦では、我々は日本相手に確実に3ポイントを挙げる予定だった。直前に監督が交代したし、いろいろ問題を抱えていると思ったからだ。予定どおり、我々は日本相手に勝ち点3を挙げた。しかし我々は日本より先に家に帰らなければならなかった。もう日本は弱小チームでも、サッカー後進国でもない。世界のトップ20、30入りするチームだろう。1998年からずっとW杯に出場し続けている力は伊達ではない。もはや、当たってうれしいチームではないんだ」

 グループリーグのライバルたちは、その後の日本対ベルギー戦での日本にも驚いたようだ。レバンドフスキは言う。

「ベルギーは今世界の3本の指に入るほどのいいチームだが、日本はそのチーム相手に30分近く完全にゲームを支配していた。その間ベルギーはなす術(すべ)がなかった」

 ベルギー戦での活躍は、初戦で日本相手に黒星を喫したコロンビアにとって、多少の慰めにもなったようだ。コロンビアのホセ・ペケルマン監督は少し自嘲気味に言う。

「少なくとも我々は、弱小チームに負けたのではなかったわけだ。10人になったというのもあったが、日本のオフェンスは本当に強かった」

つづく

7/10(火) 9:30配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180710-00010004-sportiva-socc