「日本はどうなっているのか。また台風の犠牲が出たのか?」というのが、開口一番のイビチャ・オシムの言葉だった。
「台風ではなく豪雨ですが大きな犠牲が出ています」と答えると、
「1日も早く復興して欲しいし、いつの日にかこうした災害の犠牲がなくなることを願ってやまない」とオシムは続けた。

――(ロシア対クロアチア戦は)壮絶な試合になりました。

「サッカーも真剣勝負で、それぞれの試合が喉元にナイフを突きつけられている状況だが、身体に問題のある人は死に至ることもあり得る。
ワールドカップをプレーする選手たちは皆100%かそれ以上を出し切っている。力尽きて走れなくなってもなおプレーしようとする。
ソチの気温がどのくらいだったか教えてくれ」

――もの凄く暑いです。35度に近かったと思います。

「それは厳しい。ソチは黒海海岸沿いの美しいリゾート地だ。多くの人々が夏のバカンスや冬の避寒で訪れ、休養するにはいい場所だ。
しかし今は暑すぎる。だからすべての試合が生きるか死ぬかになる。

 すべてを出し切らざるを得ない選手は、フィジカル面でもメンタル面でもほとんど空っぽになる。チームの力は拮抗し、
多くの試合がPK戦までもつれ込むから、プレーするのがとても大変だ。

 たったひとつのミスが命取りになる。そうした人生を送るのは簡単ではない。まったくミスすることなく生きていくのは。
 ミスを犯せばきつく咎められる。あまりに厳しいと言わざるをえない」

――今日の試合もまさにそうでした。

「選手たちは消耗し尽して、疲労が試合の運命を決めた。フィジカルコンディションが良ければ試合もずっといいものになっていたが、
疲労が試合のレベルも下げてしまった。優れた選手でもコンディションが万全でなければ思うようなプレーはできない。

 モドリッチにしろ香川にしろ、頭に酸素を送り続ける必要がある。酸素の補給は不可欠で、へとへとになって家に帰るようではまずい」

――コンディショニングがとても重要になります。

「それでも幾人かの選手は才能を示した。モドリッチやコバチッチ、クラマリッチといった選手たちで、彼らには未来がある。
それは日本の選手たちも同じだ。

 日本はもう1試合やるべきだった。他がどんなやり方をするかを観察して、必要なだけ相手に喰らいつく。そうなって欲しいと私は願う。
 君らを心から祝福する。 日本に幸運が訪れんことを」