● 国民総出での応援は、今や“常識”に

 ワールドカップ(W杯)ロシア大会が盛り上がりを見せている。予選リーグ敗退が濃厚かと思われていた前評判を跳ね返し、西野ジャパンが大躍進。まだ決勝トーナメント進出が決定したわけではないが、思わぬ好成績に日本中がお祝いムードに包まれている。

 当然、筆者も日本代表に声援を送った1人だ。とはいえ、普段からJリーグや海外リーグを熱心に観 ているわけではない。いわゆる“にわか”である。しかし、国際大会のヒリヒリした感覚は観ていてエキサイティングだし、せっかくなら日本代表に勝ってほしい。そんな思いで自宅で声を張り上げ、一喜一憂しながら試合を楽しんでいる。

 自宅にいても街の熱気が伝わってくる。繁華街に住んでいるせいもあって、日本がチャンスやピンチを迎えるたびに、外から大きな声援とため息が聞こえてくる。日本代表がゴールした際は、マンションの上の部屋から叫び声とドンドンという音が聞こえてきた。深夜1時をまわった時間にそんな音が聞こえれば、普通なら抗議もしたくなるが、その日ばかりは無礼講である。顔が見えぬご近所様と、喜びをわかちあった。

 日本代表戦の試合があるたびに、渋谷のスクランブル交差点には多くのサポーターたちが集まり、警察官も動員される大騒ぎが繰り広げられる。日本代表がW杯に初出場した1998年のフランス大会以来、国民総出で盛り上がるのが“常識”になっている。

 しかし、である。そんな国民総出のイベントに、乗り切れない人たちもいる。著者のように普段は熱心なサポーターではない人まで、4年に1度のこの時期になると青いユニフォームを着て日本代表に声援を送るなか(著者は、さすがにユニフォームは着ていないが)、冷めた目で現在のお祭り騒ぎを見ている人たちがいるのである。

 誰もが日本代表を応援しなければいけない。日本代表戦があった次の日には、その話題で盛り上がらなければいけない──。そんな同調圧力に違和感を覚え、モヤモヤしている人たちにとってこの時期は息苦しい。日本代表の活躍に冷水を浴びせるつもりはないが、そういった人たちは今の状況をどのようにとらえているのか。胸の内を探った。

● “にわか”は、大騒ぎしたいだけのバカ?

 さっそく筆者が聞き取り取材した“W杯アンチ派”の意見をチェックしていこう。

 「サッカーが好きではない人が、1人もいないかのような雰囲気に息苦しさを感じる。テレビをつけてもW杯の話題ばかり。もっと大切なニュースがあるだろうに」(30代男性)

 「普段からサッカーを観ている人ならいいけど、そうではない人たちまでお祭り騒ぎするのが気持ち悪い。特に、渋谷のスクランブ交差点でハイタッチしている人の気がしれない。大騒ぎできれば、別にサッカーじゃなくてもいいんだと思います」(40代女性)

 「日本代表戦で盛り上がるのは勝手だけど、試合を観なかったことを職場の同僚に『ありえない』と言われてモヤモヤ。試合を観なかっただけで、まるで非国民のような扱いです。サッカーに興味ない人もいるんだから、せめてほっといてほしい」(20代男性)

 「急にサッカーにハマった友人が、『日本は絶対ベスト8に進出する!』ってドヤ顔で予想してたんだけど、そんな甘いものなの? 浮かれすぎだと思います」(30代女性)

 「とりあえず、『半端ない』と言っておけば盛り上がる、みたいな風潮……」(30代男性)

 「動物に試合の勝敗を予想させるやつ、あれは何なんですかね?本気?」(20代女性)

 コメントを見る限り、現在の狂騒めいた状況に、相当フラストレーションが溜まっているようである。なかでも、“にわか”に対する反感は強く、W杯アンチ派の目には「大騒ぎしたいだけのバカ」に映っているようだ。筆者も耳が痛い限りである。

つづく

ダイヤモンドオンライン6/27(水) 6:00
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180627-00173362-diamond-soci

写真
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