西野采配が見事にはまった。本田も存在感を示した。試合の中身として日本らしさを存分に出した。2度、リードされ、追いついた執念も評価したい。だが、勝てる試合を勝ちきれず勝ち点「3」を逃した……もったいない……それが正直な感想だ。

この試合に得点をつけるとすれば「60点から70点」というところか。
ワールドカップは、最後の最後まで何が起こるかわからない。ここで決めきれず、そういう得体の知れない何かを最後のポーランド戦へ残してしまったのである。

序盤は日本にチャンスがあった。コロンビア戦を3戦目に残すセネガルは、この試合に必勝を誓い、大胆にシステムを変えてきた。ボランチの2人を縦に近い形に並べ、攻撃的な布陣を組んできたのだ。おかげで中盤に思いの外、スペースが空くことになり日本はボールを回せた。どこか判断に迷いが見えるGK川島のパンチングのミスで、前半11分に先に失点したが、34分に柴崎―長友―乾の連携で、すぐさま同点に追いつく。このゴールが大きかった。

柴崎のハーフライン手前付近からのロングボールに、「裏が空くので、そこをずっと狙っていた」という長友がディフェンスラインの裏に走りこんでペナルティエリア内で、高い技術力でボールを止めて、相手の逆をついて戻してキープ。そこに一度、引いて受けるように構えていた乾が絶妙のタイミングで連動してきた。乾のゴールは、膝下だけを振り切ったシュートで“そこしかない”というコースを狙い打った。
 素晴らしいシュートだった。

セネガルは、ゲイエを下げボランチを横並びにして中盤のシステムを元に戻してきた。後半26分にまた勝ち越し点を許すと、西野監督が動いた。後半27分に本田、続いて30分に岡崎を投入して、大迫―岡崎の2トップにして、本田を右のハーフサイドに置き、「4−4−2」のシステムで点を取りに行った。

それまでボールは回せるが、前線に攻撃の起点を作れなかったため、最後のところで崩せずに苦労していた。だが、西野監督は、その起点を作って点を取りにいくという明確な意図を持って、キープ力のある本田と、ディフェンスを翻弄する運動量のある岡崎を続けて入れることで流れを変えようとした。

後半33分。乾の折り返しをGKが飛び出していないゴールに叩き込んだ本田のシュートだが、実は、そのボールはバウンドして浮いていた。咄嗟に本田は、ボールを上から抑えるようにしてインサイドで打った。そこに詰めていたポジショニングもさることながら、焦ってシュートをふかしてもおかしくない場面で“決めきる”落ち着きと経験値、そして技術。“さすが”としか形容ができない。スタメンから外されても決して腐ることなく、サイドラインから乾らにアドバイスを送っていた。これが本田が“持っている男”になれる理由なのだろう。

セネガルの攻撃の生命線であるサール、マネとのサイドの攻防も日本は制した。左サイドは、長友に乾、右サイドは酒井宏に原口。1対1では勝てないが、2人で挟み、2人が互いにカバーし合うというグループ戦術でカバーした。ディフェンスは、どこでプレスをかけ、どこでボールを奪うのか、という狙いどころについての意識を全員が共有しており不安視されていたセカンドボールの攻防でも負けてはいなかった。アフリカのチーム特有の個々の身体能力の凄さに、日本は、グループや連携という“和の力”で対峙した。ワールドカップという舞台で、日本らしさを見事に表現した意義は大きいだろう。