J1神戸は前半戦を6位で終え、ワールドカップ(W杯)ロシア大会のため中断期間に入っている。パスサッカーへの転換を主導する三浦淳寛スポーツダイレクターは「順調」と総括。W杯に出場し、今夏に合流するスペイン代表MFイニエスタへの期待も含め、今後の展望などを聞いた。(有島弘記)
■前半戦 4-3-3の戦術確率順調

 −W杯の中断期間までにシーズンのほぼ半分の15試合を終えた。

 「順調に来ている。今までの堅守速攻から、よりボールを支配したサッカーをするには頭の中を変える必要があった。監督、コーチを含め、選手の意識が非常に高い」

 「中盤までビルドアップし、判断良くボールを動かしながら相手の隙を突く回数が少しずつ増えている。逆にボールを奪った時は相手の背後、ゴールを目指すのが最優先。そこの判断もできるようになってきた。アタッキングサード(相手ゴールまでの3分の1のエリア)の崩しに手を付ける段階に入った」

 −そのために必要なことは。

 「人と人の連係、個の技術。仕掛ける動きで相手の守備のバランスを崩し、隙を突いていく。当然、シュートの技術を上げる必要もある。やることは山ほどある」

 「勝ち試合はいくつかあった。例えば浦和戦(2−3で敗戦)。今のスタイルを続けながら、勝負所を選手がもう少し理解できれば、勝ち点3を拾っていける」

 −今季は韓国代表ボランチの鄭又栄(チョン・ウヨン)をセンターバック(CB)で起用。

 「後ろからボールを配球でき、体が強く1対1にも強い。GKの金承奎(キム・スンギュ)との連係も考えれば、彼のCBはチームにとってすごく大きい」

 −中断期間の前には渡辺、ウェリントンの2トップが活躍した。

 「今はスタイルを確立している段階で、基本形は4−3−3。僕がいる限り、スタイルはぶれない。(別の陣形は)対戦相手や、けが人の関係で臨機応変にやっていけばいい」

 −今季はポドルスキが主将を務めている。

 「負傷離脱したが、チームがスタイルを変える中、彼のキャプテンシーの影響力はすごく大きい。話すタイミングも意識している」

 −監督とは日々どう接しているのか。

 「常にコミュニケーションを取っている。もちろん監督以外とも。そこを磨いていれば、お互いに感じたことをすり合わせることができる。バラバラは、うちのクラブスローガンの一致団結に反する」

 「三木谷(浩史)会長は『とにかく明るく』と言ってくれる。このクラブは会長の力が大きい。僕を含めて上手に管理され、みんなが『会長のために絶対アジアを取ろう』という気持ちになっている」
■イニエスタ チーム力向上へ司令塔役を期待

 −この夏にはイニエスタが合流する。評価は。 「僕なんかが評価する立場ではない。バルセロナのカンテラ出身の最高傑作で、世界でも最高のミッドフィルダーの一人。クラブには世界(W杯)を取ったルーカス(ポドルスキ)とイニエスタがいて、日本人も優秀。タイ代表、韓国代表もいてアカデミー出身の若手も頑張っている。楽しみで仕方がない」

 −イニエスタ獲得の効果は。

 「チーム力は間違いなく上がり、日本サッカー自体がレベルアップする。Jリーグの価値も絶対に上がる。一つの基準がACL(アジア・チャンピオンズリーグ)。Jリーグがアジアの中でナンバーワンのリーグでなければいけない」

 「バルセロナには世界的なスターで人気があるメッシ(アルゼンチン代表FW)がいるが、バルサに行けば、イニエスタ。その選手がヴィッセル神戸に来る。選手、スタッフ、みんなハッピーな気持ちになる」

 「(旧知の)元代表選手たちも『イニエスタ来るんだよね?』『絶対に見たい』と言っていた。『知らないよ』で通したが、みんなが見たいと言っている」

 「イニエスタは171センチと大きくない。その彼が世界のフィジカルが強い連中を相手に、ひょうひょうとやってきた。日本人が参考にすることは山ほどある。イニエスタが持っているものを分析し、良い部分を吸収していけば、日本代表は間違いなく強くなる。ましてや、うちのチームとアカデミーの選手は彼のプレーを近くで見られる」

 −イニエスタはアカデミーの構築にも携わる。年俸約30億円とされる投資を回収できるのか。

 「それは三木谷会長を含め、楽天本社が考えていると思う。僕が考えることはイニエスタに今まで通り、楽しくやってもらう環境をつくること。現場をまとめることに力を入れたい」

 「メソッド(方法論)、子どもたちに対するアプローチの仕方…。彼の意見があれば、全てを参考にしていきたい」