■戸田和幸の目(元日本代表)

(19日、イングランド2―1チュニジア サッカー・ワールドカップ)

 個々の能力を考えたら、やはりイングランドの方が数段上。それでも苦戦したのは戦況に合わせて、自分たちの布陣を変えるといったオプションがなかったからだ。

 チュニジアは前半途中にプレスの方法を変えつつ、相手の布陣に対してより明確に対応するため、4人だったDFを後半から5人に変えた。前半と同じ陣形で攻め続けたイングランドの攻撃を少しずつ確実に抑えていった。

 近年は90分を通して、自分たちの戦い方を貫くことは難しくなっている。タブレット端末などを使って、相手の動きや攻め方の傾向を試合中に分析し、次の一手を打つことができるからだ。欧州のトップクラブでは当たり前にやっているそんなことを、W杯でも実践しなければ勝てなくなるということだ。

 イングランドのサウスゲート監督は、好転しない試合を布陣ではなく選手を代えることで状況を打開しようとした。しかし2トップを組んでいたケーンは本来は1トップ、スターリングはウィングタイプの選手。適材適所と言えず、持っている高い能力を発揮しきれず、連動性も見られなかった。セットプレーでのマークの甘さに助けられて勝ったが、同等レベル以上のチームが相手だと厳しくなるのではないか。

 試合の中で形を変えるのは選手任せでは不可能で、ベンチからの指示が必要だ。誰を起用し、どこに配置して、どんな全体像を描くのか。ベンチの重要性を改めて感じさせる試合だった。(元日本代表)

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180619-00000108-asahi-spo