大舞台で勝てない“スリー・ライオンズ”

毎度のことながら、イングランドでは代表への期待が高まっている。ただしその都度、新しい失敗のバリエーションを生みだす能力に長けているのもまた、イングランドなのかもしれない。

■大舞台で勝てない“スリー・ライオンズ”

実際のところ、1990年のイタリア大会で準決勝に進出して以来、イングランドは重い期待に応えることができていない。1992年のEUROでは未勝利でグループリーグ敗退となり、1994年のW杯アメリカ大会では予選敗退というみじめな結果に。大きな大会で勝てないというのが、イングランドの新しいトレンドになってしまった。「黄金世代」は必ず準々決勝までは進出するものの、その先はいつもPK戦、レッドカード、スター選手のケガ……あるいはこの3つ全部により阻まれてきたのだ。

イングランドの旗である聖ゲオルギウス十字の旗をもったり、顔にペイントしたりしているファンがどれほど多かろうと、チームを勝利に導くことはできなかった。大会の始まりではイングランドの可能性について騒ぎまくりながら、結局は栄冠にたどり着けない――そんな夏のなんと多かったことか。ミスジャッジのせいだと審判の電話番号が暴露されたり、選手や監督への非難が殺到したりもした。

デイヴィッド・ベッカム、マイケル・オーウェン、リオ・ファーディナンド、ジョン・テリーといったスターが国際舞台から去り、チームとしての夢が道半ばでしぼんでいっても、まだイングランドは自らを空売りする道を進んでいる。

■失望の歴史

2010年のドイツ大会で散々な目に遭い、2012年のEUROではイタリア相手に完全に何もできず。2014年のブラジル大会ではグループリーグ最初の2試合で敗退が決定し、2016年のEUROではアイスランドに屈した。このところのイングランド失望の歴史には、フラストレーションがたまる一方だ。もはや大きな大会での優勝は望めないのではないか、これが一般的な見方になりつつある。

イングランドサポーターの脳裏に、今回もまた絶望へ突き落されるのではないかという疑念があるのは間違いない。有利に見えるグルーブGでさえ、勝ち残れないかもしれない。W杯初出場のパナマにも負けるのではないか。自分で自分の足を撃つようなことになってしまうのではないか、という不安を誰もが感じているのである。

期待値の低さが後押しに?

この夏、イングランドはいずれの強豪国も苦しめることができないと、誰もが予想しており、ギャレス・サウスゲート監督のチームは早々に敗退すると言っても無礼ではなくなっている。今大会は、国際大会でほとんど経験のない選手たちの勉強の場になるとみられているのだ。1962年以来、イングランドは何度も代表に選ばれている選手があまりいない状態でW杯に参加しており、事情通の大半はロシアに向かう23人の選手の中にW杯に慣れている選手が足りないことを指摘している。

それでも、2006年から2014年にかけてW杯に3度出場したフランク・ランパードは、期待されないことでかえって選手たちはのびのびと自分らしいプレーができるかもしれないと『Goal』に語った。

「イングランドにはチャンスがあると希望をもっている。期待値がやや低いことは、チームにとっては良いことかもしれない。ユース時代には良いチームだった。とくに攻撃陣はね」

「イングランド代表には、プレミアリーグで非常に良いプレーを見せている優秀な選手が何人もいる。彼らは一丸となって戦うことができると期待しているよ。サウスゲート監督は、選手とともに懸命に仕事をしている。きっと、運を引き寄せて相手を倒すことができるはずだ。勢いをつけて大会に臨めるかどうかが重要。グループリーグは突破できると予想しているし、どこまでいけるか見てみようと思う」