香川と乾の二人が見せた阿吽の呼吸

 一方で、スイス戦に続いて4-2-3-1システムを採用したが、チーム全体の攻守にわたる狙いや連動性は確実に高まっている。例えば守備のやり方も、当初の高い位置からプレッシングに行くのではなく、ある程度ブロックを作って引き、そこから追い込んでいくという流れになった。おそらくこれは選手からの意見を上手くすり合わせながらたどり着いた形であり、パラグアイ戦で機能していたところを見ると、本大会もこれがベースになる感じがした。

 ただ主戦システムが固まっても、「誰を起用するか」で、その“質”は大きく変わる印象だ。パラグアイ戦では1トップに岡崎慎司が入り、トップ下を香川真司が務めたことで、守備時は二人が2トップの形になり、どちらかが追い出し、どちらかがカバーに回るという役割分担がしっかりとできていた。

 だが、例えば運動量が多くない本田圭佑がトップ下に入れば、おのずと1トップを務める選手には守備面で大きな負担がかかってしまう。チーム発足から日が浅い分、個々の選手の特徴によってピッチ上の戦いが大きく変わる印象が強い。

 それは攻撃面も同様で、日本の生命線であるコンビネーションは2、3人のユニットの関係性で大きく変わることが改めて証明されたように思う。今回のパラグアイ戦で言えば、誰もが香川と乾貴士の連携、阿吽の呼吸には改めて魅了されたことだろう。

 1点目のシーンでは昌子源から香川に縦パスが入った瞬間に、乾が3人目の動きでサポート。これを見た香川がワンタッチで落とし、二人がクロスして最後は乾が右足でミドルシュートを決めた。セレッソ大阪でチームメイトだった頃に培った感覚、そして乾自身がスペインで磨いた決定力。まさに西野監督が期待していた“化学反応”が生まれた瞬間だった。

 2点目も、右サイドからのボールを香川が後方にフリックして乾がシュート。サポートの距離感も絶妙で、その連動性の高さは最近の日本代表にはなかったもの。先日のスイス戦で、同ポジションで先発した本田と宇佐美貴史と比較すると数段レベルが上がっていた。

 パラグアイ戦でベンチスタートとなった本田と宇佐美の心境としては、香川と乾の素晴らしいパフォーマンスを目の当たりにして「やばいな」という思いと、ある意味「負けたな」という思いがあったかもしれない。特に本田は冷静な選手であり、客観的に自らを分析できるので、最近の発言を聞いている限り、自らのコンディションが今一つ上がっていないことを誰よりも認識しているような気がする。

 とにかく19日のW杯初戦のコロンビア戦まで、何よりも大切なのはコンディションを整えること。そして私も現役時代に経験したのだが、素晴らしい試合をした後はチームの雰囲気が良くなる一方、しっかりと気持ちを切り替えないと、得てして次の試合が難しいものになってしまう。心身両面を整えて、コロンビアとの初戦に臨んでもらいたい